俳優の井上芳雄が8月16日、東京會舘で行われたミュージカル「ナイツ・テイル-騎士物語-」の製作発表に登壇。堂本光一とダブル主演で“世界初演”を担ったオリジナル作品への強い思いを語った。
シェイクスピア最後の作品である本作は、ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーの名誉アソシエイト・ディレクターで、「レ・ミゼラブル」などで知られるジョン・ケアードの脚本・演出を手掛けたミュージカル。2018年に帝国劇場で世界初演を果たし、新型コロナ対策を徹底して実施して好評を収めた昨年夏のコンサート・バージョンを経て、今回が待望の再演となる。
2000年に帝劇「エリザベート」ルドルフ役で鮮烈なデビューを飾り、高い歌唱力と端正なルックスでスターダムを駆け上がった井上。騎士パラモンを演じる同作の再演について「前回、世界初演と掲げさせてもらったとおり、ゼロからこのオリジナルミュージカルを作れたことが大きくて。毎日必死でしたが、コンサートや稽古で音楽の素晴らしさ、物語の深さをあらためて感じて、これをゼロから作れたなんてすごいと。しかも、それを変えること、新しくすることをいとわない、むしろ喜んでそこに進んでいくのがこの作品の魅力やエネルギーになってます」とコメント。
さらに「僕と光一くんの演じるアーサイトは、愛し合い、憎み合う関係なんですが、初演は一緒の舞台に立つのも初めてだったので、すべてが『光一くんってこうするんだ~』という発見でした。3年経って、互いを知ってから演じると、アーサイトとパラモンはここまで違う人物だったんだなってあらためて感じて。選んでいく人生、悩んでいくことの違いがはっきりしてきた。僕が演じるパラモンのこういうところは、どちらかというと光一くんに似てるな、とか、逆も然りで。分かった上で演じるのは面白いなと思っています」と明かした。
堂本は、そんな井上について「いつも2つの印象があるんですよ。僕にないものを持っているので、そこはもう任せればいいやっていう安心感と、逆に、ステージに立つときは大役者なので、うかうかしてるとパンチ食らっちゃうなーという緊張感。そこがすごく共存しているので、よし、頑張ろうと思える。そういう存在は貴重で、ずっとそんな感じが続いています」と評していた。
井上は「初演から3年経って、この状況下で、光一くんと一緒にステージに立てることを幸せだなと感じています」として、「世の中の状況は厳しくなっていく一方ですが、だからこそ稽古場では純粋に穏やかに、幸せで豊かなクリエイティブな時間が流れています。お客様にとっても、劇場の中が一種のユートピアのような機能を果たして、その時間だけでも大変さや苦しみを忘れ、お客様の喜びや励みになるよう意識し、100公演近く完走できるよう日々の稽古に臨んでいいます」と語った。
ミュージカル「ナイツ・テイル-騎士物語-」は9月から大阪、東京、福岡で上演。
◆取材・文=坂戸希和美