初めて聴くリスナーにオススメ、ヘビーリスナーにも新鮮な驚き「ハライチのターン!」の魅力

ハライチ※画像はWEBザテレビジョン タレントデータベースより


ラジオのコーナーには定番となって長期間続くものがあるが、この番組ではほとんどのコーナーが短期間で終了する。そうするとリスナーがそれぞれのフリートークで引っかかった部分を勝手にコーナーにして投稿してくる。そこから面白かったものは新しいコーナーとして始まり、また短期間で終了していく。

コーナーが長く続けば色んな展開やお決まりのようなことも生まれ、それもまたラジオの良さではあるのだが、この番組に関しては、短いスパンでのコーナーの入れ替えのおかげで常に新鮮さをたもっている。

さらに、普通のラジオではスタッフの名前が出てくることがよくある、「ディレクターの○○さんが」「ミキサーの○○さんが」というワードが、ハライチの二人から出てくることはほとんどなく、ときおり耳馴染みのない名前が出てきたときには、必ずどちらかがこういう人だと一言フォローを入れている。ラジオだからこそ出来るスタッフとの内輪感という良さを使うことが出来ない反面、初めて聴いたリスナーであっても、誰一人として置き去りにされることがないのである。そのため、私は普段あまり芸人ラジオを聞かないという人におすすめを聞かれたときは必ずといっていいほど「ハライチのターン!」を挙げている。

こういった普通のラジオとは異なる特徴をもったラジオ番組を可能にしているのは、M-1で普通とは異なるシステムの漫才を披露したハライチだからこそなのかもしれない。

ハライチのフリートークの特徴


番組の中心となっているのは岩井、澤部がそれぞれおこなうフリートークだ。トーク内容が面白いというのはもちろんなのだが、この番組を聴くときにはぜひとも二人の話の聞き方に注目してもらいたい。ハライチの話を聞くという能力の高さはとても素晴らしい。「うん」という当たり前の相槌ひとつにも、興味・関心・驚きなどの感情が詰まっており、話しているほうもトークに熱がのっていく。

2021年7月1日にラジオクラウドに配信されたアフタートーク内容も素晴らしいものだった。前の週にアフタートークで岩井が話した「文字盤がないシンプルな時計が欲しいのだがまったく売っていない」というトークをうけて、多くのリスナーからこんな時計はどうですか?と画像が送られてくる。それを見た岩井は自分が先週「ない」と断言したことにすら触れず、ただただ「いいねぇ」と薄いリアクションをとる。

最初に「あなた先週はないって言ってたんですよ」と説明を入れた澤部だったが、そこからは時計を次々と紹介し続け、話の途中でようやく少しずつツッコミ始める。岩井の「いいねぇ」というニュアンスを聞いた澤部が、すぐにツッコまないという判断をしたことにより、面白さが倍増している。

ひとしきり時計の話が終わったあと「どうしてんの、そういうの?」という岩井の質問に、「一人暮らしのときは家具をコーディネートしてくれるおばさんにやってもらっていた」というあまり聞いたことがない発言をした澤部に対して、今度は岩井が聞き役となり「それはおかしい」という指摘をしはじめる。

話し続ければ続けるほどそのおかしさが、どんどん浮き彫りになっていき、そのおばさんは怪しい人物なのではないかという岩井に対して、澤部はあえておばさんの怪しさを際立たせるようなトークを出して加速させていく。

初心者にもすすめやすく、ヘビーリスナーにも新鮮な驚きをあたえるこの番組。お互いのトークに対してまた新たな側面を見せつけあいながら、1つの作品のような話を完成させる「ハライチのターン!」を聴いていると、今でも私はあのとき二人の漫才を見たときのような衝撃をうけることがあるのだ。