先月8月16日に行われた、テレビ東京系バラエティ番組「あちこちオードリー」のオンラインライブではリアルタイムでは6万枚、アーカイブを含めると8万枚のチケットを売り上げた。同イベントの購入者には、「トーク内容を外部に漏らさない」「SNSに具体的な内容を投稿しない」などといった条件が求められた。こういった口外禁止の有料ライブイベントは、南海キャンディーズの山里亮太やカンニング竹山なども行っており、軒並み高い人気を誇る。有料に加えて「口外禁止」という制限がありながらも支持される理由には、その場でしか聞けない“レア感”や、出演者と観客の“共犯関係”があるのではないか。SNSの浸透などにより、炎上リスクが大きくなっている昨今、一見すると時代と逆行する「“非”拡散」イベントは、コアなファンのオアシスと化している。
先月にライブ動画配信サービス「PIA LIVE STREAM」で配信されたオンラインライブ「あちこちオードリー 真夏のオンラインライブ ~心のお札はがし祭~」では、MCを務めるオードリー、ゲストのハライチが“心のお札をはがす”ことをテーマに本音トークを繰り広げた。前述の通り口外禁止の条件がありながらも、2,000円(グッズ付きは2,500円)する配信チケットは合計8万に枚超えと、飛ぶように売れた。
また、昨年行われた、パンサー・向井慧をゲストに迎えたオンラインライブ「祝!あちこちオードリー開店1周年パーティー~春日の店、今夜は完全予約制ですよ!~」でも、向井が日々の反省を書き記したノートの内容などが大きな反響を呼び、アーカイブも含めると約4万2千人の視聴者数を記録した。
こうした「SNSに投稿しない、ネタバレしない」といったある種の“秘密保持契約”を前提としたイベントは、オンライン・リアル問わずいくつも存在する。
吉本興業が発表した「上半期エンタメオンラインイベント販売枚数ランキング」によると、第1位は、山里と若林によるイベント「明日のたりないふたり」だった。同イベントは、吉本公式の配信プラットフォーム「FANY Online Ticket」のみで約2万3千枚の販売枚数をマーク。 なお、Huluなど、その他プラットフォームでの販売枚数を合計すると、実に約5万5千枚にまで達した。こちらのライブにも“SNS等でのネタバレは厳禁”のルールが課されていた。
また、山里は「たりないふたり」のほか、口外禁止のリアルイベントとして「140」を行っている。「140」は、Twitterの140字ではつぶやききれない日々の思いなど、“溜まりに溜まった言いたいこと”を届けるライブとして2011年にスタート。開始以来、着実に開催地域を広げ、現在では全国ツアーと化している。また、カンニング竹山の単独ライブ「放送禁止」も、5年目を境にチケットが即完売するほどの人気ぶり。2020年には配信ライブを行い、3000枚限定でチケットが発売された。
来場者・視聴者に「ライブであったことを一切口外しない」「ネットに書き込まない」などの条件を課すことは、 プロモーションのためには「いかに“拡散”させるか」が重要となっている時代の流れと逆行しているとも取れる。にもかかわらず、規約を遵守するコアなファンに支えられ、何年も継続開催する人気イベントになっているのだ。