今回の公演では感染対策の一環として、会場に集まったファンが、音楽ライブでありながらこれまでのように声を上げることができないという制約があった。そのようなある種、異様とも言える状況でも同じ空間をみんなで共有する方法としてDEANが打ち出したのは、これまでの自身の音楽ライブにはなかった、ミュージカルの要素を取り入れたライブパフォーマンスだ。
それによりこれまで以上にストーリー性が増したこのライブパフォーマンスは、「Plan B」にも通じる作り込まれた表現感があった。
しかし、それと異なるのは、リアルライブの演出のひとつとしてその要素を取り入れながらも、生の演劇のようにその場でフィジカルに動くことで、生まれたライブ感だ。これはミュージシャンと俳優という2つの顔を持つ彼だからこそ、その場で高次元で成立させることができるハイブリッドな表現だと言えるだろう。
そんな新たな表現が試みられた今回の公演では、「Shelly」、「Searching For The Ghost」など過去曲や最新曲「Runaway」に加えて、「Sayonara」、「Sukima」、「Missing Piece」、「Spin The Planet」の4曲の未発表新曲など、約1時間45分に渡って披露された。しかし、その方向性を示す上で最も重要な役割を果たしたのは「Neo Dimension」だ。
同曲は、かつて「自身の自己紹介、意思表明的な楽曲」として発表された「My Dimension」を生まれ変わらせた曲だが、その際には新たに常に進化し続け、新しいステージを歩み続けるDEANのこれまでの時間と想いを凝縮した未来に導く「コンパス」という意味が加えられている。