声優がドラマ出演なぜ? ボーダーレス化進む″声優ブーム”の今後

YouTubeや″企業案件”、CM出演も…インフルエンサーとしてポテンシャルを発揮


昨今では自身のYouTubeチャンネルを持つ声優も増えており、インフルエンサーとしてのポテンシャルも注目されつつある。

「鬼滅の刃」で主役の竈門炭治郎を演じた花江夏樹は、チャンネル登録者数200万人を突破。ゲーム実況を中心とした動画を定期的に更新し、小野賢章と江口拓也をゲストに迎えた「声優が全力で『声優になろう!』をやるとこうなる」は490万回以上の再生を記録している。さらにサスペンスアクションゲーム「LOST JUDGMENT(ロストジャッジメント):裁かれざる記憶」やスマホオンラインRPG「ラグナロク オリジン」など、ゲーム作品の企業案件動画も請け負い、インフルエンサーとしての役割も果たす。

「銀魂」で主人公・坂田銀時役を務めた杉田智和の「杉田智和・株式会社AGRS」チャンネルは、登録者数74万人。生配信を中心にゲーム実況、フリートーク、料理動画など幅広く発信している。杉田も花江同様、企業案件にチャレンジ。「アジルスとドデカイディッパーKYO【杉田智和/AGRSチャンネル】」と題した「おやつカンパニー」に関するクイズに挑戦する動画や、ハンティングアクションゲーム「モンスターハンターライズ」の先行プレイ動画などをアップロードしている。

その他、中村悠一、梶裕貴、白井悠介らも30~50万人台のチャンネル登録者数を誇る個人チャンネルを保有。本業の声優としてだけでなく、YouTuberとしても高い影響力を持つ声優が珍しくなくなってきた。

また、個人チャンネルだけでなく「SUUMO(スーモ)」のWEB動画に木村昴が起用されたり、マンナンライフ「クラッシュタイプの蒟蒻畑」に梶裕貴と鬼滅の刃・竈門禰豆子役の鬼頭明里が出演する事例もあり、WEBプロモーションというフィールドでも顔出しで声優を起用する事例が増加している印象だ。

木村昴

″ファンの熱量”と、場数を踏んだ人気声優の”安定感”が重宝


このように、声優がテレビドラマやバラエティ番組、YouTubeチャンネル、企業のプロモーションなどに登場する機会は、確実に増えている。

その理由として、ひとつには「鬼滅の刃」を筆頭とするアニメ作品の大ヒットにより、声優という存在が馴染み深いものになり、認知度が向上したことが考えられる。小中学生の将来なりたい職業ランキング(2021年4月、ニフティ調べ)でも3位にランクインしており、声優は一般的に憧れの存在になっていることがうかがえる。声優は、ニコニコチャンネルなど配信系WEB番組への出演機会も多く、人気声優になるほどレギュラーラジオやトークイベントなどでも場数を踏んでおり、フリートークの安定感が評価されている面もあるだろう。

また起用側の視点で考えると、声優の出演情報は熱量の高いファンによりSNSで拡散されやすい傾向にある。番組や商品の効率的な情報拡散と新規層開拓につながり、起用メリットが多いのも事実だ。

以前から、音楽活動を行う声優は多かったが、最近はさらに顔出しでの演技や、マルチタレント的に活動する事例も増えてきた。

しかしながら、声優の本質は「演じる」ことであり、現在の声優ブームの中、ひとくくりに声優として紹介されることに疑問を感じている“役者肌”の表現者もいる。また、声優が声の演技以外のフィールドへ進出することに違和感を覚えるファンもいるかもしれない。だが、人気・実力ともに持ち合わせる声優たちの活躍の場が増えることが、エンタメ業界全体の盛り上がりに貢献しているのは間違いない。現在は実写映像で活躍するのは一部の人気声優・ベテラン声優が中心だが、本記事で挙げた以外にもボーダーレスに活躍するスター声優が生まれるか注目していきたい。

※岩崎大昇の「崎」の正式表記は「立つさき」