――その一男は牧師として、周りの人から頼られる善人。しかし、娘のひかりが白血病に侵されたことから、先に亡くなっていた最愛の妻が抱えていた秘密、つまりひかりが自分と血のつながった本当の娘ではないことを知ってしまい、動揺する。
一男は自分では悟りを開けていると思って、皆さんの相談を聞いていたけれど、いざ自分の問題になると、そうはいかなくて。でも、一男本人は「この世界は愛にあふれている」と信じていたんだと思います。それが一番信頼していたところから揺らいでしまい、彼自身、どうしたらいいのかと葛藤する。そこで追及の対象が亡くなった妻ではなく、自分自身なのが一男の魅力であり、人間くささなのかなと思います。
――もし一男のように大切な人の秘密を、期せずして知ってしまったら?
多分、知らないふりをすると思います。僕は心から信頼したら、その人に裏切られてもいいと思う人なので。まあ、僕は子供のころから、自分が望んでいないのにキャストどころか、ロケーションもすぐに変わる人生を送ってきたから、余計にそう思うのかもしれませんが(笑)。自分が選んだ信用できる人であれば、たとえ後で隠し事をしていたことが分かっても、そう言わざるを得ない理由があったんだろうなと思うでしょうね。そういう意味では、一男に近いものがあるかもしれません。僕自身は父親になった経験はありませんが、この映画における父と娘の会話には素直に心を動かされます。
取材・文=馬場英美
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