山田愛奈「自分を崩すのは恥ずかしかった」“クール”からの脱却でさらなる飛躍へ<インタビュー>

山田愛奈 撮影:山田健史

19歳ならではの感受性で雪子を演じられた


――山田さんは2020年4月からフリーランスとして活動されていますよね。今作は3年前、フリーになる以前に撮影された作品ですが、公開への思いはいかがですか?

この作品は10代最後の作品だったこともあってすごく思い出深い映画なんですが、まさか23歳の今になって公開されるとは思っていませんでした。改めて見ると、今の私には演じることのできない雪子になっていると感じます。

19歳ならではの、子どもと大人の間である葛藤があったり、今だったら寝て起きれば忘れているようなことも深く悩んだりしていたような時期でした。悩みの内容は違えど、雪子も私と同じように悩んでいて、その部分がリンクしました。

雪子を役作りするというより、半分は自分を投影していたのかもしれません。自分の拭いきれなかった気持ちや悔しい気持ちを、雪子を通してやっと言葉に出せたような面もあったので、雪子を演じることで、自分が救われたような気持ちにもなっていました。

――もし今、雪子を演じることになっていたら、また違う雪子になっていたんでしょうね。

もしかしたら、もっとわざとらしい感じになっていたかもしれません(笑)。10代だった当時は、難しいこともなんとか理解しようとしていたけれど、年齢を重ねた今は反対に、難しいことは難しい、と割り切ってしまうこともある。19歳ならではの感受性で雪子を演じられたので、あの時演じることができて良かったなと思います。

フリーになって、演技の勉強をやりたかった


――今作の撮影からの3年間、独立も含めいろいろなことがあったと思います。

これまでは、モデル業をメインにお仕事をさせていただきました。でも、フリーになったタイミングで「non-no」の専属モデルも卒業して、女優業に関して長い時間をかけて考えることができた。それまでは、もちろん役をいただいたら、その役についてたくさん考えていましたが、女優業そのものについてはそこまで深く考えたことがなかったんです。それで、モデル業は一回お休みして、フリーになったタイミングで女優業の方に専念しました。

「ダンシング・マリー」は、初めて参加する長期間の現場だったんです。東京と北九州と台湾で撮影して、大勢のスタッフの方と先輩キャストの方と一緒に作品を作って。私は、現場の中でも一番芸歴も浅かったし年齢も下だったので、すごく学ぶことが多かったんですよね。そこで、映画の作り手側の楽しさや、モデル業とは違う表現の仕方を身に染みて感じました。

モデル業と女優業のどっちも並行して活動することも楽しかったんですが、モデル業よりも女優業に興味が出たんです。それで、フリーランスになって演技の勉強を一からしようかな、と。

――この作品を撮影したころから、フリーランスとして活動することを意識し始めたんですね。

そうです。ここまで大きな作品はやったことがなかったので苦しい面もあったんですが、終わったときの達成感の方がすごく大きかったです。

――フリーになって一年半ほどたちます。実際にフリーで活動してみて、どんなことを感じますか?

これまで演じてきたのは、モデル業があったからいただいていた役なんだと思うんです。誌面ではキリッとクールな表情を見せていることが多かったのもあって、クールな役や内に何かを秘めているような役が多かった。フリーになってからは、いろんな役柄、いろんなお仕事のオーディションに挑戦できるようになったことが楽しいです。演技の幅も以前より広がったんじゃないかなと、プラスに思っています。

――たとえば、以前から山田さんのファンである方たちが知らないような、フリーになったからこそ見せられるようになった一面はありますか?

私、しゃべらないとすごく冷たいというか、クールな印象で見られることがすごく多いんです。それに、私自身も今まではそのブランディングのようなものを崩しちゃいけない、と思っていて、SNSでの発言や載せる写真も、自分の中でフィルターを重ねていたところがありました。

だけどフリーになってから、そうじゃない自分を見せてもマイナスになることはないなと気付くことができた。自分を崩すのは恥ずかしかったんですが、最近始めたラジオなどを通して、素を少しずつ出すことによって、ファンの方がより近い存在で応援してくれるようになりました。

――違う面を出す怖さはありませんでしたか?

ありました。今までのキャラクターを好きでいてくれた方が離れちゃうんじゃないかって。でも、全然そんなことはなかった。私自身のことを知りたくて見てくれている方もすごく多いんだなと感じることができたので、これからも気取らず、少しずつ素の部分を見せていきながらお仕事をして、ファンの皆さんに恩返しできたらなと思っています。

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