――asmiさんの曲は10代から同世代、同性に響く恋愛、日常の歌詞が共感を呼んでいます。特にラブソングが多い印象ですが、それは先ほどの高校時代の失恋が影響しているのですか?
それもありますけど、ラブソングが多いのは私がまだ20歳で、曲を書きはじめたのだって18歳のころ。人生経験が少な過ぎて、みんなを前向きにさせるような、私が憧れている人のような曲を書けないから。でも、恋愛だったら色々思うこともあるし、たくさん書けることがあると思ったからです。あとは実体験を混ぜることもできるから、それでラブソングが多くなっているところはあります。
――asmiさんの憧れの人というのは?
シンガーソングライターでいうと、片平里菜さんです。すごく真っ直ぐな声で、芯のあるストレートな歌詞が心の奥から包み込んでくれるというか…。聴けば元気になれるし、元気でないときは音楽に耳をゆだねられる安らぎもある。片平さんの音楽に救われたときもあって、すごく好きです。
――歌詞には実体験もということですが、例えば9月にリリースされたシングル「Call me」。これはひどい振られ方をした失恋の歌になりますが…。お聞きしても大丈夫ですか?
「Call me」はそうですね、実体験もありつつの話で、丸々私の話ではないです。2番の歌詞の「彼氏と別れたと聞いていた 彼女と別れてなかった」というのが、10代のときにあった私の実体験で、あまりよくない恋愛だったなって思います。振り返れるようになったから書いた歌詞で、曲を書くときってだいたい記憶から引き出して書いているんです。
――歌詞では「二度とかけてこないで」と言っているのに、タイトルは「Call me」なんですよね。気持ちの奥底の声というか、歌詞とタイトルのつながりに何とも言えない切なさを感じてしまいます。
好きに遊ばれているのが嫌だから二度とかけてこないでと言ったけど、本当は電話してほしい。そういう気持ちってなくせないと思って。ただそれはあえて歌詞で書かないで、タイトルで表現してみました。
――こういう失恋や恋愛、ふとした日常といったティーンの等身大の歌詞というのが共感性のあるところだと思います。同世代に向ける部分で意識していることはありますか?
共感のために無理に近づけようと考えたことはないですけど、今聞かれて思ったのは、みんなけっこう同じような恋愛をしているからじゃないのかなって。私が感じたことを友達も感じていたり、「Call me」みたいな私がしていた悪い恋愛を友達が今していたり。誰もが似たような経験があって、そうした中で頑張っているからこそ、私が書いた曲に共感してくれているんじゃないのかなって思います。
――asmiさんが思う今の10代、20代に必要な曲、届く曲というのはどういうものだと思いますか?
曲全体のことはもちろん大事ですけど、音にしても歌詞にしてもキャッチーさってどうしても必要なのかなって思います。目まぐるしく色々なことが動いている時代で、SNSで瞬間的に触れるシーンが多いから、キャッチーにすることで曲を聴いてみようと思ってくれることの方が多いのかなと思います。
「Call me」でいうと、私が弾き語りで作った時点では暗いバラード調だったんですけど、それをアレンジャーさんに明るいポップな感じにしてもらったり。届くようにしたいというより、届けるためにかもしれないですけど、そこはすごく考えます。それと、意識しているわけではないけど、友達に話し掛けるような感覚で歌詞を書いていて、同世代の方はそういう部分にも近さを感じてくれているんじゃないのかなって思います。
――asmiさんが歌を通して表現していきたいこと、今後の未来像をお持ちであれば教えてください。
そのときそのときに書きたいことを書かせてもらえるのが一番いいなと思っていて、今はラブソングが書けるし、書きたいから書いているけど、もっと人間として成長していったら、違うテーマを書くかもしれないです。
声のこととか、私が音楽に救われてきたからこそ、みんなのしんどい気持ちを救う曲も書けるようになりたいと思うし、ラブソングももっと色々な形があると思うので、投げ掛け方は変わるかもしれないです。そうしてもっとたくさんの人に私の曲を届けられればいいなと思います。
取材・文:鈴木康道
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