――「オールナイトニッポン」全体でいうと近年、様々なメディアで取り上げられたりと注目される機会も増えている気がします。
ありがたいことに最近でも、日本テレビ・水卜麻美アナの「オールナイトニッポン0(ZERO)」や(「オールナイトニッポン」の制作現場に密着した)NHKの「100カメ」とか、話題にしていただく機会は増えていますね。数年前までは、ラジオの聞き書きがネットニュースになることが多かったのですが、音声コンテンツの盛り上がりを特集したり、パーソナリティの方へのインタビューだったり、ポジティブに取り上げていただくことが増えました。
――数年前に、佐久間(宣行)さんの「オールナイトニッポン0(ZERO)」イベントでおぎやはぎの小木さんが「(当時テレビ東京社員だった佐久間さんのパーソナリティ起用について)ニッポン放送がすごいことをしたという感じがする」という予言めいたことも言っていましたが、このように近年フィーチャーされるようになった理由をどのように捉えていますか。
たしかに小木さんがおっしゃってくれてましたね。それでいうと、2018年に「岡村隆史のオールナイトニッポン」がNHKの「シブヤノオト」とコラボしたり、裏番組のTBSラジオ「おぎやはぎのメガネびいき」と突然、電話をつないだりしました。
ちょっと前までは、他のメディアや他局の話題を出すことはタブーに近かったのですが、『面白いことか』『リスナーが盛り上がってくれるか』を最優先にいろんなことを仕掛けることが出来始めて、自由にやる空気が醸成されていった感じです。その結果が、佐久間宣行さんがAKB48のオールナイトニッポンへのゲスト出演だったり、秋元康さんの後押しもあってその後のレギュラー起用につながったと思います。
その後、佐久間さんの番組に伊集院光さんをゲストに来ていただいたり、テレビ朝日の弘中(綾香)アナで特番実施など、佐久間さん起用がきっかけでタブーが崩壊した形です(笑)。だから佐久間さんがエポックメイキングなのは間違いないですね。
――「オールナイトニッポン」といえば、数年でパーソナリティが交代するイメージがありました。最近は比較的、長い期間パーソナリティを務めている人も出てきていますが、そのあたりの状況を教えてください。
そうですね。そうした流れのきっかけのひとつに、2015年から始まった岡村さんの歌謡祭(『岡村隆史のオールナイトニッポン歌謡祭』)があると思います。歌謡祭に関わったことで、リスナーの熱量やナイナイさんのラジオを20何年も聴いてくれる人たちの存在を目の当たりにしたのですが、この熱量はなかなか1年や2年では醸成できないと感じました。
やっぱり番組が継続することで、番組本がつくれたりイベントができたり、選択肢が広がります。なので、「オールナイトニッポン0(ZERO)は1年、オールナイトニッポンも2~3年が目安だよね」というような改編ありきの考え方もかつてはあったのですが、いまは改編が前提という考えではなくなっています。
また、2016年にradikoのタイムフリーが始まったことも大きな影響があると思います。SNSで放送内容が拡散したり、その放送を後から追えることで、より多くの方にオールナイトニッポンというコンテンツに接していただける環境が整っています。ニッポン放送がまずやらなければいけないことはいいコンテンツをリスナーに届けるということで、そういう意味では「リスナーファースト」「コンテンツファースト」の考え方になったと思います。
――パーソナリティが変わらないことで、逆にマンネリ化してしまうという懸念はありませんか。
「オールナイトニッポン」は長年、中学生や高校生といった10代をメインターゲットに作ってきました。でもradikoのデータを見ると、リスナーのボリュームゾーンが圧倒的に20代なんです。そういうところでいうと、10代は毎年、進級や進学があって生活サイクルが変わるので、短期間のサイクルでパーソナリティが変わっていくという考え方があったと思うんです。でも20代以上のリスナーの皆さんは、ある程度生活サイクルは変わらないので、番組が長く続いていても生活習慣の一部になります。だから継続的に多くの人に聴いてもらえるという部分では、パーソナリティが変わらないということはメリットとも言えます。
その一方で、さまざまなアーティストや芸人の方、佐久間さんのような方がパーソナリティを担当するというのもオールナイトニッポンの魅力だとも感じています。オールナイトニッポンの歴史はパーソナリティが変わっていく新陳代謝の歴史でもあるわけで、そうした要素も理解しつつ、「リスナーファースト」「コンテンツファースト」の視点で考えていければと思います。