現在メジャーになっているアクスタの楽しみ方のひとつが、写真に撮ってSNSに投稿することだ。例えばコンサートやイベントの際にアクスタを持っていき、会場の前で映り込ませた写真を撮ってSNSに投稿するという行動は以前から見られた。しかし今Instagramでアクスタの写真を投稿する際に使われているハッシュタグ「#アクスタのある生活」「#アクスタグラム」などを検索すると、それぞれ数万件の投稿がみられるが、その中にはイベント会場やコンサートで撮影されたものばかりでなく、カフェや飲食店、自宅などで撮影されたものも多い。
日常のちょっとしたお出かけや、おうち時間の場面を撮影するときにアクスタを映り込ませることは、コロナ前から行われてはいたが、イベントが多く中止になった2020年~2021年にかけて、よりいっそう一般的になったと思われる。Instagramで「#アクスタのある生活」「#アクスタグラム」などのハッシュタグを利用しているのは二次元コンテンツや男性アイドルのファンが多いが、Twitterでもハロプロのファンを中心に使われている「#FSKとおでかけ」「#ご飯ととるのがいいと聞きました」などの類似ハッシュタグがある。なお、「#ご飯と~」のタグは元Juice=Juice宮崎由加のツイートが発祥である。
Twitterにおける「アクスタ」「アクリルスタンド」が含まれるツイート数の推移を調べると、2020年の夏ごろからツイート数の大きな伸びが見られる(ソーシャルインサイトによる編集部調査)。GWの第1波に続き新型コロナウイルスの第2波が訪れ、多くのイベントやコンサートが中止になった時期だった。またキャラクターグッズを扱うECサイト「カドカワストア」担当者によると、「アクリルスタンド」ジャンルの売上は2020年以降、前年同期比で大幅に増加しているという。もちろんリアルのイベントが中止になり、現地でグッズを購入できない需要が通販に流れたという要素もあるだろうが、アクスタ自体の需要が急速に増加したことも明らかだろう。
アクスタ人気の理由は、近頃の「推し活」の活発化と切り離せない。タレント、キャラクターなど特定の好きな存在=「推し」を熱心に応援する「推し活」は、近年非常に盛り上がり、2021年の流行語大賞にもノミネートされた。Z世代の8割以上に何らかの推しがいるという調査結果も存在する(2021年、ピックアップ株式会社調べ)。特定の「推し」を熱心に応援する上で、その「推し」をどこにでも連れ歩くことができ、身近に感じられるアクスタは、非常に親和性の高い商品だと思われる。小さくて薄いので持ち歩きもしやすく、SNSに投稿することで自らの推しをアピール・宣伝することが容易だ。コロナ禍で実際に推しと触れ合える機会が減少したため、そのニーズがより高まったのではないだろうか。
アクスタが一般的になるにつれ、アクスタに付随するグッズも色々と販売されるようになった。例えばアクスタを並べて撮影するための背景ジオラマのキットや、かわいく飾って保管するためのスタンド、傷を防いで持ち歩くためのケースなど、多様な工夫を凝らした商品がみられる。最近だと帝国劇場から劇場座席の写真を使った背景スタンドが発売され、「推しをいつでも帝国劇場に立たせることができる」と話題を集めた。
アクスタと近しい存在としては「アクリルカード」「ぬい」(キャラクターをデフォルメしたぬいぐるみ)などがある。アクリルカードはSNSの投稿風のフレーム内に人物像がはめ込まれた商品で、それを通して写真を撮ることで推しと一緒に出掛けているような気持ちになれる仕組みだ。アニメや2.5次元、宝塚などさまざまなジャンルで商品化されている。
ぬいは二次元キャラクターでは比較的メジャーな商品で、タレントグッズとしては関ジャニ∞が2019年に「GR8EST BOY」と名付けたぬいぐるみを販売。さらにジャニーズではなにわ男子や、舞台「DREAM BOYS」のグッズなどでもぬいぐるみが販売されている。YouTuberやK-popアイドルなどのぬいも見られる。ただデフォルメデザインの難しさもあるため、アクスタほどあらゆるジャンルでグッズとして取り入れられるのは難しいかもしれない。
アクスタの人気はそのまま「推し活」の隆盛を反映しているといえるだろう。今後も「推し活」のトレンドに伴って新たなグッズが出現するのか、注目していきたい。
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