――山崎豊子さんの「女系家族」という作品にはどのような印象をお持ちでしたか?
山崎豊子さんが1963年にこの「女系家族」を書かれたというのを知ったとき、全く古さを感じないことに驚きました。人間の心理や情景がとても緻密に描かれているだけでなく、遺産相続という大きな渦の中に巻き込まれていく人々の姿がそれぞれに濃く描かれて、読んでいて胸が苦しくなるようでした。
今回のドラマの脚本はその原作の小説をぎゅっと凝縮したものですが、(脚本も手掛けた)鶴橋康夫監督のテイストが台本の中にもふんだんに盛り込まれており、山崎豊子さんの小説を今の時代に私たちが作品として作る、ということへのエッセンスもちりばめられていて、台本も台本でまた面白く読ませていただきました。
――鶴橋康夫監督の作品というのも宮沢さんにとっては特別な思いがありますか?
そうですね。私が10代のときから鶴橋監督は憧れの存在、スーパースターであり、今やスーパーレジェンドでいらっしゃいます。10代、20代の頃に見た監督の作品はすごくセンセーショナルでしたし、好きな作品がいっぱいあって、目に焼き付いているシーンもいっぱいあります。
――今回の現場でもそういった部分を体感されていますか?
はい。監督の「よーい、スタート!」と「カット!」は本当に体の中から絞り出すような掛け声なんです。「カット」の後も「オッケー」だけのときもあれば、「大オッケー」「大はなまる」のときもあって、監督から良い言葉がもらえると、「あ、良いシーンが撮れたんだな」とうれしくなるんです。
役者陣は鶴橋監督の“念”のようなものに突き動かされ、監督からの「大はなまる」がもらいたくて頑張っているような気がしますね。
今作は監督のことが大好きで、監督の作品に出ていることに喜びを感じる役者たちが集まった作品でしたし、そんな私たちと現場を監督は本当に愛情深く包み込んでくださっているんです。
――宮沢さんが今回演じられた浜田文乃はどんな人物だと感じましたか?
一言で表現するにはあまりにも奥が深い役ですね…。文乃は矢島嘉蔵という1人の男性を愛し、それがきっかけで遺産相続争いの大きな渦にのまれていくわけですが、矢島家という大きな力に1人で対抗していこうとする強さを持った女性だと思います。
頭の良さと生命力にもあふれていて、“人間の欲”というものを直視して分析する力がある人だな、と思いながら演じていました。
物語に大きく渦巻いているのは「遺産相続」ではあるのですが、文乃にとっては嘉蔵さんとの心のつながりが全ての原動力。物語の中ではそれほど多くは描かれない“文乃と嘉蔵さんとの関係性”を常に想像し、その関係性に満たされている人間だということを忘れないようにしながら演じようと思いました。
文乃が嘉蔵と過ごした時間、嘉蔵から受けた愛を自分の中で培養していた気がします。
――矢島家の総領娘である藤代を演じる寺島しのぶさんとは初共演ですが、いかがでしたか?
これまでにもたくさんのすてきな映画に出られていて、それらのどの作品でも毎回違った寺島さんを拝見するのが本当に楽しみでした。
矢島家という莫大な財産を持った家の長女に生まれた女性、という役を見事にご自分のものへと引き寄せていらっしゃって、佇まいだけでその背景がにじみ出るほどの存在感は、やはりすごいなと思いました。
実際ご一緒するシーンは緊迫した場面が多いので、楽しくというわけにはいかなかったですが、やはりその藤代と文乃の張り詰めたシーンというのは寺島さんと2人で引き上げていくものだなと、ご一緒していて感じました。その時間は本当に楽しかったので、次回はぜひ仲の良い役で共演したいです(笑)。
――最後に視聴者の皆さんにメッセージをお願いします。
1963年に書かれた物語が、息を吹き返すかのように鶴橋監督の手でよみがえります。寺島しのぶさんとの共演も初めてで、そこも大きな見どころの1つですし、目が離せない展開が続く素晴らしい作品になると思いますので、皆さんも最後まで楽しんでいただけたらうれしいです。
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