この「逃亡医F」というのは不思議な運命を持ったマンガ作品かもしれません。ある雑誌から医療マンガの原作を依頼された私は、当時医者を主人公にした連載を3作ほど抱えていたため一度は断りました。
それからしばらく喫茶店で雑談のようなものが続き、「そろそろ帰ります」と言うタイミングを探っていたときに後ろのテーブルのお客さんが飼い犬の話をはじめました。どうもそのワンちゃんはうつ病(だったか自閉症だったか)で定期的に通院をしているようなのです。
犬にもうつ病があるなんて大変だなあ、いろんなお医者さんがいるんだなあ、などと思いながらなんとなく帰るキッカケを失っているうちにいつのまにかまた作品の話になり、そして作画は「サトラレ」で有名な佐藤マコトさんと聞いて、気づいたら編集者と夢中になって船医がどうの、医者が旅をしてどうだの、と構想を練ってでき上がったのがこの「逃亡医F」です。
あの時、どこかのセンシティブな犬がお医者にかかっていなければこの作品は生まれていなかったでしょう。そんな経緯でこの世に誕生した作品ですが、今回日本テレビさんでテレビドラマ化の話が持ち上がったと聞き、正直驚きました。
なぜなら、いくら医療ドラマが当たっているから(?)といってこれは普通の医療ドラマとは違います。恋人殺しのぬれ衣を着せられた不運な医師が日本全国を逃げ回りながら出会った人々の体と心を救う話なのですから。
「ロケを考えただけで制作費が、、、、きっと立ち消えになるに決まってる」でもそんな心配は杞憂(きゆう)に終わりました。しかも主人公の藤木圭介(鳴海健介)を演じるのは私も大好きな成田凌さん。もうキャライメージにピッタリの役者さんです。
成田さん演じる主人公が日本中を逃げ回る中、どんな人間ドラマを紡いでくれるか、、、原作者であることも忘れ、今からワクワクしながら放送を待ちわびています。