【テレビの開拓者たち / 飯塚健】気鋭の監督が明かす“ドラマと映画の違い”

2017/04/08 20:00 配信

芸能一般 インタビュー

“ながら見”でも楽しめるドラマにしたかった


4月29日(土)から映画版が公開される「笑う招き猫」。熱き友情で結ばれた漫才コンビ、ヒトミ(清水富美加)とアカコ(松井玲奈)の青春物語(c)山本幸久/集英社・「笑う招き猫」製作委員会/TBS


――また、民放のテレビだと、CMがありますよね。CM前やCM明けの見せ方を意識したことはありますか?

「これも最近ですが、多少は意識するようになりました。CM前はちゃんと“引き”があるシーンで終わらせなきゃいけないとか、その辺は昔よりは配慮するようになった気がします。以前は、CMが入るのは当たり前なんだからしょうがないでしょ、なんて思ってましたからね。でも、“しょうがない”で片付けてたらダメだなと。『笑う招き猫』もそうですけど、このごろはかなり自由に作らせてもらっているので、その分、テレビの番組を作っているという意識もしっかり持っていないといけないなと。それと、自分に子供ができたことも大きいかもしれません。少しだけ、まともになったというか、大人になれたのかもしれない(笑)」

――4月11日(火)(※MBSは4月9日[日])に最終回を迎えるドラマ版の「笑う招き猫」に関して、演出で工夫した点はありますか?

「最初は映画だけの企画だったんですけど、映画を広める意味でも、ドラマも作ろうという話を頂いて。プロデューサー陣と話し合いをする中で、映画の前日譚や後日譚ではない、映画とは全くリンクしていない作品にしたいなって思ったんです。それでこそ、テレビでやる意味があるんじゃないかって。だから、主演の2人と共演の男子2人の4人がメインで、他のキャラクターはほとんど出てこないし、主人公の漫才コンビが漫才をするシーンはひとつもないっていう(笑)。

以前作った『REPLAY&DESTROY』は、セリフの一語一句を大切にしながら、俳優部もアドリブなんてそうそう入れられないような作り方だったんですけど、今回はその真逆の作り方をしていて。いわば、ライブ感覚の撮影というか。例えば、主人公たちがパソコンを開いて、自分たちが作った動画の再生回数が伸びているかどうかをチェックするというシーンでは、『こういう話題でちょっとしゃべってみて』と大枠のテーマだけ投下して、あとは勝手にしゃべってもらう。演劇のエチュードみたいな感じですね。ある程度自由にやってもらって、間延びする部分はカットしたり、別の方向から撮ってみたり。ちょっとしたハプニング感というか、きっと見ていて、どこからが芝居なのか分からないと思うんですよ。最低限のセリフは決まってるけど、脚本は1話につき5~6ページぐらいしか書いてないし。

そういうやり方をテレビでやらせてもらったのはありがたかったですし、非常に新鮮な体験でしたね。映画を撮り終わったあとの撮影でもあったので、俳優陣もある程度役ができているというか、キャラクターとしてしゃべることがなじんでいたのかもしれない。ただ、それはもちろん、映画があったからこそできた手法なんですけどね。ドラマだけだったら『これ、何なの?』ってなってたと思います。

それともうひとつ意識したのは、まさに“ながら見”でも楽しんでもらえるようなドラマにしたかったっていうこと。また『REPLAY&DESTROY』を引き合いに出しますけど、あの作品は深夜ドラマらしからぬ情報量の多さで、すごく真剣に見ないと置いていかれてしまうような作品だったんですね。でも今回のドラマは、途中2分間ぐらい見てなくても、全然ついていけるようなものにしたかったんです。何も考えずに『なんだコレ?』って感じで、ドラマを見ている時間だけ笑っていただければいいかなと」

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