「クリエイターズ・ファイル」#79 著名人が愛した社交場「ドイド」伝説のママ・矢崎すず子

すず子ママが明かす、古き良き時代の華麗なる交流録


──常連客にはどのような方がいらっしゃっていたのですか?

文豪、政治家、スポーツ選手、俳優、棋士、騎手、旗手、歌手、捕手いろんな人間が来ましたよ。川崎修悟なんかは開店初日から来てるんだよ。フクギ興産の会長・福木菊之助さんは22歳から常連だよ。バランディアレコード(現・CLEAR SOUNDS)の会長・薔薇元克成もよく来るわね。今だから言えるけど、女優の勝木本子は俳優の大楠元樹と一緒に来てたんだから。笑えるんだよ。その2人の姿を写真に収めようとして週刊誌の記者が来ることもあったけれど、結局そいつらも仕事を放り投げて一緒にうちで飲んでたよ。

司会者の沼田アキラなんかは警察に捕まる寸前までうちで酒を飲んでたの。笑えるのが、ボクサーの東儀京助は計量の前日にうちにハヤシライス食べに来たんだもん。どうなってもいいって(笑)。コメディアンの風神雷神やイナリも常連さん。ドリー・ハーロンが黒ずくめのSP数名を引き連れて来たときにはさすがの私もびっくりしたかな。亡くなっちゃったけど、マネージャーさんがたまに顔出してくれるんだ。

都市開発で西紫水の街は大幅に変わってしまったが、社交場「ドイド」は今も変わらない。看板は当時のもの(一度盗難被害に遭うが取り返す) 撮影=高橋宗正/(C)クリエイターズ・ファイル

──開店のきっかけは何だったのですか?

こう見えて私はお嬢さまなの。私の父は新聞社の副社長だった。付き合いも広かったから毎晩色々な人とお酒を飲んでいた。私も一緒になって飲んでいるうちにいつの間にか。いつの間にかがもう60年以上だからね。

──60年以上ドイドを経営する中で大変なこともありましたか?

それは当然のこと。女手ひとつで長男と次男を育てるのは楽ではなかったよ。店が傾きかけたことだってあったけど、結局はお客さまが助けてくれるんだよ。自分だけでは60年以上は厳しいって。まあ今では長男はテレビ局に勤めて、次男はお店を手伝ってくれているんだよ。次男の喜美之は本当に馬鹿な野郎なんだけど、今でもママ、ママと言ってくるからかわいいよ。

次男でフリーターの喜美之さんは母であるすず子ママを支え、ドイドを手伝うことも多い。長男の美知也さんはJQS山梨改化放送の副局長 撮影=高橋宗正/(C)クリエイターズ・ファイル


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