2020年の「M-1グランプリ」で4位に入賞し、一躍売れっ子芸人の仲間入りを果たした錦鯉(長谷川雅紀、渡辺隆)。先日、自叙伝「くすぶり中年の逆襲」を出版した2人は、飛躍の年となった2020年を「人生で一番楽しかった」「あっという間だった」と振り返る。また、今年50歳となった長谷川は「別な段階の青春が始まったような気がする」とも語った。昨年4位に好成績だった「M-1」について、「人生で一番悔しかった」と語る錦鯉は、ブレイク後も「M-1」の舞台に立ち続けている。その背景には「マヂカルラブリーを後ろから見たあの光景が忘れられない」という渡辺の強い意志、「僕らは『M-1』に育ててもらった」という長谷川の芸人としての心意気があった――。
――はじめに、今回の著書が出版されると聞いた時の気持ちからお聞かせください。
長谷川:僕は去年の「M-1グランプリ2020」決勝戦前の記者会見で、「人生大逆転というテーマで本を出したい」と言っていたんですよ。お笑いを始めた頃、書店にダウンタウンさんやウッチャンナンチャンさんの本が並んでいるのを見て、「いつかは自分も本を出したい」と夢見ていました。正直、この年齢になって半分諦めかけてましたから、お話をいただいた時は夢が叶ったということでめちゃくちゃテンションが上がって、もう、うれしくてジャンプしました!
渡辺:出版が決まった時はうれしい反面、実感が湧きませんでした。その後、出来上がった原稿を読んでも、実際に出版されても現実感がなかったんですけど、今日インタビューを受けてようやく「本、出てるんだ」とちょっとだけ思えるようになりました。あと今、雅紀さんの話を聞いて、僕らの本が松本(人志)さんの「遺書」とかと同じ、お笑い芸人の書籍コーナーに置かれるんだなと思ったら、実感が湧いてきましたね。
――2021年は大ブレイクの年となりました。改めてこの一年を振り返ってどう思いますか。
渡辺:年間を通して憧れていたテレビの世界でお仕事をさせていただくことができ、非常に充実していました。人生で一番楽しかった一年かもしれません。この一年を来年も再来年もずっと続けていきたいです。
長谷川:本当にあっという間で、密度の濃い一年でした。テレビやラジオ、インタビューなど1日の中でたくさんお仕事が入っている日があったり、一日中ひたすら打ち合わせが続く日があったり、深夜の生放送を終えて次の日の朝も生放送に出る日があったり…。とにかく慌ただしかったです。今までお笑いライブとアルバイトしかしてこなかった人生が、この一年でガラッと変わりましたね。
――長谷川さんは年齢的に、多忙な日々に疲れを感じることはありませんか。
長谷川:たまにお仕事でかなり早い朝起きとかあるんですけど、全然、屁の河童ですね!売れてない時も、バイトの夜勤終わりにそのまま寝ずにパチスロ打ちに行ったりしてましたけど、トータルで見たら当時はかなり睡眠を取っていたんですよ、結局。これまでバイト生活を続けてきた30年間、十分過ぎるくらい寝溜めしてきたんで、今帳尻を合わせてる感じです(笑)。
渡辺:大丈夫? 急に倒れないでよ(笑)。
――本の中で長谷川さんは「売れない頃って、仕事もお金もないけど時間だけはタップリあるから。ヘンな話、青春がずっと続いている感じ」と書かれていました。売れっ子になった今、「青春が終わった」という感覚はあるのでしょうか。
長谷川:いや、また別な段階の青春が始まったような気がしています。今はコロナ禍だから大勢で集まって飲んだりすることはできませんけど、いつか、テレビのお仕事などを通して新しく知り合った人たちと飲みに行きたいです。そうなったら、僕が今の立場で抱えている悩みとか思っていることを話して、一緒にバカなことをやったりしたい。もちろん、売れてなかった時代からの芸人仲間とも、変わらず仲良くしていきたい。そんな感じで、たぶん青春はこの先も続くんだろうなと思います。
――飛躍のきっかけになったのが、2020年の「M-1グランプリ」でした。大会では4位という好成績を収めましたが、この結果についてどう思いましたか。
渡辺:人生で一番悔しかったです。「M-1」の決勝進出が決まった時は、順位が何位でも満足するだろうと考えていましたし、実際に、マヂカルラブリーが優勝を決めた時も「本当におめでとう」という気持ちでいっぱいでした。でも、放送終了後、楽屋へ帰る頃には「めちゃくちゃ悔しい」という感情が芽生えていたんですよね。
長谷川:もちろん優勝するつもりで臨んでいたから、「そっか…この結果か…」と、悔しさをグッと堪えて飲み込んだ部分もあります。けど、よくよく考えてみれば、あの錚々たるメンバーの中で4位という順位は、良かったんじゃないかとも思うんですよね。