――今作は「実在のテレビ番組」をモチーフにした漫画で驚きました。どういう想いで制作されたのでしょうか。
M-1は、芸人それぞれが競っているけれど、審査員、スタッフ、観客と共に大会を盛り上げようとしているように感じます。その会場の熱気が、画面を通して視聴者にもダイレクトに伝わってきます。だから、芸人に感情移入できるし、自分も審査しているような気持ちになれる。芸風や審査基準に対する論争にも参加したくなる。そのような空気が漫画から伝わるようにしたいと思いました。
――「これは漫才なのか論争」や「審査基準論争」も近年の風物詩となりました。今作は「笑える」マンガだと想像しましたが、元お笑い芸人の女性が主人公のヒューマンドラマでした。どういう点から着想を得たのでしょうか。
「M-1」があれほど笑えるのだから、こちらの漫画を笑いで勝負するのはおこがましいと思うんです。 M-1は、「リアタイ視聴で観なくちゃ」「観た後も語りたい」と思わせてくれる、数少ないテレビ番組だと思います。会場のどよめきが可視化されていて、審査に参加しているような気分まで味わえます。テレビの前に人が集い、番組についてあーだこーだと言い合っているシーンを描きたかったのです。そういうやり取りに一番説得力がある素人は、元芸人ではないかと思いました。
でも、原作担当の人が言ってたことですが、元芸人がM-1を観るって、残酷な状況でもありますよね。かつて近くにいた人たちが夢を叶えていく瞬間を、夢破れた人がリアルタイムで見る、そんなシチュエーションって、普通に生きていたらなかなかない。ただ楽しくテレビについて語り合っているだけのシーンでも、心の中では、悲喜こもごもが渦巻いているはず。そんな風に、ほぼ全編“テレビの前にいる物語”でもドラマになるんじゃないかと思ったんです。
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