坂東龍汰、主演映画でトランスジェンダー役に挑む「ちょっとドキッとするシーンはありますけど、覚悟を持って見てほしい」【連載:坂東龍汰の推しごとパパラッチ #6】(後編)

2022/01/10 18:00 配信

映画 インタビュー 連載

坂東龍汰が片山友希を撮影 撮影=坂東龍汰

――印象に残っているシーンは?

終盤にユイと俊平(松永拓野)と真也の3人で、カフェで話すシーンです。大まかな流れとオチだけ決まっていて「あとはみんなでやってみて」と言われて、最初に回したカットがあれでした。3人ともそれぞれにユイ、俊平、真也の気持ちに素直に従っていないとアドリブでああいうシーンにはならなかったと思いますし、あのシーンを最終日前日に撮れたことは良かったなと思います。初日にあのシーンは撮れないですからね。撮影が終わった時は、みんな泣いていました。

あの瞬間は坂東龍汰がいなくなっていないといけないシーンだったので、僕はあまり記憶がないんですけど。坂東龍汰が真也になって、こう言おうじゃなくて。真也自身が言わないとうそになってしまうシーンだったので。僕だけじゃなく、2人も記憶がないと言ってました。

――では、出来上がったものを見て、こんなだったんだと?

そうです。初号で見て、いきなりドキュメンタリーチックになっているなと思いました。全体を通して、気持ちの面で芝居はしたくないと思っていましたけどね。カッコよく映るとかも全然どうでもよくて、真也はこういう人とあまり決め付けずに状況に身を任せ、気持ちに従ってものを言った感じでした。

――だからこそ、クランクイン前に役をしっかりたたき込むことが大切だった。

そうですね。それまで何と戦ってきたか、などの気持ちを僕が分かっていないと状況に反応できないし、その都度その都度、シーンのたびに確認する時間はなかったので、準備はとても大事だったと思います。だから、撮影終わりに監督と飲む時間がすごく大事だった。翌日の撮影に向けて、監督と毎日、ディスカッションできたので。でも、そういうことはコロナの世の中ではできないわけで、この約2年間はそれができなかったのか…とも思いましたね。やっぱりコミュニケーションって、すごく大事なんだよなと。

――ただ飲んでるだけじゃない。

会話の中にあるものが、次の日の撮影を助けてくれた。演じていると、一人ではどうしようもないことにぶち当たると思うのですが、それを複数の人で解決することでシーンの奥行きが広がる。コロナ以降、役に対して結構一人でもがいていたなと思いました。誰かと話す機会がなかったぶん、成長もあったと思いますけど、この作品のことを思い出すともっと聞きたいな、コミュニケーションを取りたいなと感じます。

当たり前のことができなくなっていて、以前の当たり前が当たり前じゃない。もうそれが当たり前になっているわけですけど、コロナが“当たり前”を相当変えたなとすごく感じます。