――どのようにしてこの企画は誕生したのですか?
戦時中に命令で日本に来てそのまま取り残された人がいるということが、30年近く前にイタリアで話題になっていたんですよ。そしてどうもそういう人は他にもたくさんいるという話を僕は仲の良かったイタリア料理店の店主から聞いて…。
この物語のように、最終的に潜水艦を直すために日本海軍に協力した3人のイタリア人の話を聞いたら、すごく面白いと思いましたね。だって、イタリア人は「マンジャーレ、カンターレ、アモーレ!」という“食べて、歌って、恋をして”という人たちで、日本海軍の軍人とは真逆のタイプですから。それが協力したことも面白いし、まぁ何よりも海の上にいる間に味方が敵になっているという浦島太郎的なところがよくできているなって…。
その話を知って以来、色んなところで話をしていたら、当時、フジテレビの石原隆さん(現・日本映画放送社長)が「ドラマにしたら面白い」と言ってくれたりして…。そこから今回の物語のモデルとなった方の奥さまに話を聞きに行ったり、同じタイミングでイタリアから日本に来た方に話を聞いたりと周辺取材を重ねていきました。大体、構想が25年ぐらいですね。日本のドラマでこんなに長く企画を準備し、取材を行っていたドラマって21世紀に入ってからないっていうぐらい、制作に時間をかけています。
――実話をベースにしている面白さもあると思いますが、戦争を扱っているけれどユーモラスで温かい気持ちになる作品ですよね。
あくまでも時代は戦時中ですが、真逆の考えや立場の人たちがやむにやまれず潜水艦を動かすために協力し合っているうちに、お互いを認め合っていくという物語なのでまったく悲観的ではないです。異文化遭遇というか、全然違う考え方を持った人が出会って、最後には仲間になっていくことを描いているので今でも通じるというか…。人間ドラマです。
もちろんこれまで戦時中の日本人とドイツ人の交流を描いた作品はありますが、またイタリア人というのもいいんですよ。やはりイタリア人は、悦楽的というか人生を謳歌している人たちで、その人たちと国のために全てを捧げている帝国海軍の軍人って組み合わせ自体が真逆すぎて笑えるというか。そして、ほろっとさせる。もちろん泣かせるために物語を作ったわけではなく、笑わせようと作ったんだけど、自分で見ていて泣いちゃいました。こんなこと初めてですよ。それは、二宮くんの演技の計算など、役者やスタッフみんなの力があったと思います。
この記事の関連情報はこちら(WEBサイト ザテレビジョン)