ハライチの岩井勇気は現在、「ヤングマガジン」にて、自身初の漫画原作を務める作品「ムムリン」を連載している。このほど囲み取材に応じた岩井は、1月6日に「ムムリン」第1巻が発売されたことについて「不思議な気持ち」と率直な感想を述べた。地球に漂着した宇宙人・ムムリンと小学生・コウタの共同生活を描く同作。岩井は「自分のイメージやアイデアがいくらでも出てくるものにしようと思った」と制作秘話を語り、「意見があまり参考にならない」との理由から、相方の澤部佑に完成した単行本を渡していないことも明かした。
――初原作を務めた漫画「ムムリン」の第一巻が発売された今のお気持ちをお聞かせください。
もともと漫画や二次元コンテンツが好きで、子どもの頃はよく本屋の漫画コーナーに行ってました。そこに自分の漫画が並ぶというのは不思議な気持ちですね。
――そもそも、「ヤングマガジン」での連載の話が来たのはいつだったのでしょうか。
一昨年の中頃でした。最初は、料理バトル漫画や異世界ものなどを考えていたんです。料理バトル漫画は、グルメ対決なんですけど、本格的なグルメじゃなくて、めちゃくちゃB級みたいな。「俺の料理はこれだ!」って出した料理がカップラーメンのお湯少なめの味濃くしたやつ…という感じの作品を持っていったのですが、さすがに連載として続けていけなそうで断念しました(笑)。その後、自分のイメージやアイデアがいくらでも出てくるものにしようということで「ムムリン」の連載に踏み切りました。
――岩井さんは「僕の人生には事件が起きない」などを上梓されているエッセイストとしての顔もお持ちです。同じ書き物でも、エッセイと漫画原作では、勝手が大きく違いそうですよね。
全然違いますね。エッセイって正直、何書いてもいいんですよ。僕の思ったことを書いてもいいですし、嘘を書いてもいい。でも、漫画の登場人物は全員僕みたいな人間じゃなくて、その人が思ったことを想像して書かなきゃいけない。自分の言わせたいことを言わせちゃうと、その人じゃなくなる可能性があるから、その点はいつも注意しています。
――ほかに「ムムリン」執筆時に意識されていることはありますか。
世の中のみんながうっすら気付いてるんだけど、怖くて誰も言えないようなこととか、本当は間違っているんだけど、集団心理みたいなところで誤魔化されていることへの指摘を頭の中で貯めておき、放出するようなイメージで書いてますね。
――ちなみに、澤部(佑)さんは単行本を出版されることをご存じなのでしょうか。
知ってるけど、読んでないんじゃないかな。基本的に僕は著書を出しても、澤部にはあげないんです。澤部の意見はあまり参考にならないので、感想を聞くこともありません(笑)。ただ、子どもが見ても面白い側面がある作品にしたいから、澤部の子どもには読んでもらいたいです。
――もしもムムリンが、岩井さんのもとに来たらどう思いますか。
「こいつ、毒持ってねぇかな?」と思います(笑)。ムムリンは宇宙から来てますから、毒を持ってなかったとしても、変な電波とか人体に影響を及ぼすようなことはないかとか、細かいことが気になっちゃいますね。あと、「こいつは人や生命の命を重んじる頭はあるのか?」とも考えます。いきなり殺して来たら怖いですしね(笑)。
――「ムムリン」がアニメ化した場合、声優をやって欲しい人はいますか。
ムムリンの声は「とっとこハム太郎」のハム太郎役をやってる間宮くるみさんとか、ああいう感じの可愛い声がいいですね。とはいえ、原作を考えている時は、動いているところをあまりイメージしないようにしています。漫画がアニメ化した時って、声優さんの演技による“声の力”があるじゃないですか。漫画ってそれに頼れないので、あくまで“漫画”として書くことを心掛けています。
文、撮影=こじへい