ランジャタイの「やみつきになる」魅力とは お笑い有識者・K-PRO児島氏に聞く、ライブシーンの要注目コンビ

2019年のランジャタイ ※提供画像

昨年末の「M-1グランプリ2021」は、ファイナリスト9組のうち初の決勝進出コンビが5組という新鮮な顔ぶれだった。その中でひときわ強いインパクトを残したのがランジャタイだろう。2020年の敗者復活戦でも、ボケ・国崎の敗退コメント「国民最低~!」がSNSで話題になっていたが、昨年はついに決勝でネタを披露。「風の強い日に猫が飛ばされてくる」という導入から、どんどん想像もつかない展開になっていく漫才を、審査員の立川志らくはTwitterで「イリュージョン」と評した。

そんなランジャタイを長年間近で見てきた、都内お笑いライブ制作を多数手掛けるK-PRO代表の児島気奈氏に、ランジャタイの魅力について聞いた。また今年のM-1に向け、ランジャタイのように台風の目になりそうな、ライブシーンの要注目コンビを紹介してもらった。

初見のお客さんには絶対わからないネタ

ネタ中のランジャタイ ※提供画像


児島氏とランジャタイの出会いは、2014年頃にさかのぼる。「まだ彼らが事務所(グレープカンパニー)に所属する前、エントリー制の誰でも出られるライブが最初の出会いでした。その後浜村凡平太さんというピン芸人さんに、面白い芸人さんがいると紹介されて、2016年頃からより色々なライブに出てもらうようになりました」
児島氏は面白い芸人を探すとき、芸人同士の口コミをかなり参考にしている。事務所に所属していないフリー芸人は、事務所の斡旋がないためライブに出にくい。そこで芸人同士が面白い仲間を紹介し合うことで、仕事の幅を広げていくのだという。

そこからK-PROのライブに数多く出演し、常連になっていったランジャタイ。2019年末には年間MVPにも選出されている。児島氏がランジャタイを評価しているのはどのような点なのだろうか。

「正直、ランジャタイさんのネタって、初めて見るお客さんは絶対わからないと思うんですよ。言葉では説明できないようなネタだし、初見では『私これ無理』ってシャットアウトしちゃうお客さんもいると思います。でも2、3回見るうちに自然とハマって、やみつきになる魅力があります。だからネタを見てもらう機会を作るために、ランジャタイさんはとにかく色々なライブに出る。人とのつながりを大事にして、スケジュールがどうしてもNGな場合以外は絶対出るから、東京でお笑いライブに通っているお客さんは、いずれ必ずランジャタイさんに出会うことになるんです」

ランジャタイのネタは国崎が奇行すれすれの独特なボケを繰り返し、伊藤はそれに強くツッコむというよりも傍観しながらコメントするという芸風だ。ここにもライブシーンで培われた強さがある。

「『ウケるまでやり続ける』姿勢がすごいと思います。ライブだと空気をつかめてないときは同じことを繰り返し続けて、お客さんが癖になって笑い転げるまでやめない。それで持ち時間を超えていくこともあるんですけど(笑)。国崎さんが変なことを繰り返していると、だんだん伊藤さんと観客の気持ちがシンクロしてくるんですよ。それで伊藤さんが一言『まだやるの?』で大爆発する」

ランジャタイは「楽屋でも芸人」

2019年、K-PRO年間MVPに選出された際のランジャタイ ※提供画像


ランジャタイは「芸人人気の高い芸人」でもある。その理由について、児島氏はこう語る。

「『楽屋でも芸人さん』ということでは、周りと一線を画していると思います。舞台に立っていないときでも芸人さん。楽屋で話す悩みも、彼女が~、合コンが~、というような話じゃなくて、常に面白い話を探して話している印象です」

では児島氏が感じる国崎と伊藤、それぞれの魅力はどんなところだろうか。

「コンビってよく夫婦に例えられることがあるんですが、それでいうと、国崎さんは昔ながらの男性の芸人さんという印象ですね。あんまりしゃべりすぎないで、ストイックに寡黙に芸のことを考えている。そして一見伊藤さんが女房役、支えて寄り添うサポート役に見えるけど、よりランジャタイを知っていくと、伊藤さんの方がもっと変わってることに気づいてイメージが逆転すると思うので、それも面白いポイントです。養成所時代もひとりだけ周りと違うことをやったり、出たくない授業に出なかったり。『嫌なものは嫌』という芯があるのは、むしろ伊藤さんの方じゃないかと思いますね。綾波レイをイメージしたというあの髪形を続けているのもそうですが」