福山雅治が2月6日、1月28日に国立代々木競技場第一体育館から生配信した無観客オンラインライブ「Another Story of Promise for the Future『裸の音』」のアンコールで披露した「道標 2022」の一場面が、公式YouTubeで公開された。
2021年末、「第72回NHK紅白歌合戦」に出演した福山が、白組ラストで披露したのも記憶に新しい「道標 ~紅白2021ver.~」。みかん畑で土を触り種を蒔き、毎日懸命に働いていた亡き祖母への思いを「その手が好きです」と語り掛けるように歌い、いつ何時も自分に向けてくれていたその変わらぬ笑顔を「道標」と表現した、温もりに満ちたバラードだ。
自身がステージに立って歌うことができているのは、祖母だけではなく両親、先祖から連綿と受け継がれてきた「命のリレーのバトンを渡してもらえたから」と歌唱前にコメント。「感謝を込めて、命をつないでくださった皆さんにお届けしたい」と語った思いも含め、一連の魂のこもったパフォーマンスは大きな感動を呼び起こした。
余韻冷めやらぬ年明け、音源化を熱望する声が殺到したことを受け、新アレンジで「道標 2022」を配信リリースすると発表。実直な歌を際立たせるシンプルなバンドアレンジだった2009年の原曲に、壮大なストリングスと大編成のコーラス隊、管楽器にはホルンを加え、リズムトラックも2022年版にアップデートした。重層的かつ深みを増したサウンドは、幾多の命が折り重なって“今”という時につながっていることを音で物語るような、説得力のある仕上がりとなっている。
今回YouTubeに公開された無観客オンラインライブは、当初は同会場にて有観客ライブを実施する予定だった。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大状況に鑑みて延期を決断。代わって、リハーサル風景も含めて無観客で生中継するという新しい形のエンターテインメントをたったの二日間でつくり上げ、ファンに送り届けた。
13年前のリリース時を振り返りながら、「今につながる時間、命の役割という、つくった時とは違う形、シーンを感じながら歌っている」と福山はコメント。表も裏も包み隠さず、まさに“裸”をさらけ出す心意気で繰り広げられたライブにおける歌唱は真に迫るものがあり、画面越しに見守るオーディエンスの心を震わせた。
配信リリース日に選んだ2月6日は、福山が53歳となる誕生日であり、17歳の時に亡くした父の享年に自身が追いつく節目の日。多感な少年時代に音楽に没頭するきっかけとなった、あまりに大きな喪失体験。当時の心情と真正面から向き合い、ソングライティングに昇華したのが最新アルバム『AKIRA』(2020年12月リリース)だ。
父の名を冠したこの作品を引っ提げ、“命の役割”を強く意識した全国ツアーの開催中という、運命的なタイミングで「道標2022」は世に送り出される。この曲は、父が命を終えた歳を超えて生きていく、福山にとっての何度目かの起点となり、これからも自問自答し続けていく人生という旅路の新たな道標となるだろう。
◆文=大前多恵
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