篠田は、栄治が暮らす軽井沢の別荘の管理人を務める男。病気がちな栄治の面倒を見ながら居候させてもらっている。
栄治にとっては大学時代のサークルの先輩であり、かつて麗子とも会ったことがあるようだが彼女は全く覚えていない。自分のことを覚えていない麗子にムッとすることなく優しく対応する篠田は、物腰が柔らかくたたずまいもスマートで、その人畜無害な様子に麗子も一定の信頼を寄せるようになる。
昔からミステリー小説が大好きで、ミステリー作家を目指しているとのことだが、定職に就かずブラブラしている篠田の過去を、栄治亡き今となっては誰も詳しくは知らない。人目の付かない栄治の別荘に身を置く理由が他にもありそうで…。
ある朝、篠田は栄治が部屋で椅子にもたれて亡くなっているのを発見する。死因は風邪をこじらせての病死と診断。栄治には巨額の遺産があり、「僕の全財産は、僕を殺した犯人に譲る」という奇妙な遺言状を残していた。
遺産額はなんと1080億円。篠田は、栄治とかつて交際していた麗子に連絡し、遺言状の詳細を麗子に伝える。巨額の遺産に心が揺れ動いた麗子は、遺産の山分けを条件に「完璧な殺害計画を立てましょう。私があなたを殺人犯にしてあげる」と約束するのだった。
遺産目当てで始まった麗子と篠田の計画。栄治の過去をひもとくにつれ、次第に栄治の遺言に隠された本当のメッセージが明らかになっていく。栄治は本当に病死なのか、それとも――。