「あさイチ」“朝ドラ受け”は平和の象徴?コロナ禍でも人と人がつながるためのツールに

「あさイチ」MCを務める鈴木奈穂子アナウンサーと博多華丸・大吉(C)NHK

朝の情報番組「あさイチ」(NHK総合)で、いまや恒例となったオープニング“朝ドラ受け”。直前まで放送されていた朝ドラに、鈴木奈穂子アナウンサーと博多華丸・大吉が感想を述べ合うものだが、これがたびたびネットニュースで取り上げられるほか、SNSでは「#朝ドラ受け」のハッシュタグまで登場。「朝ドラは朝ドラ受けを見るまでがワンセット」といったコメントも多々ある。だが過去には「朝ドラ受けどうする?という議論もあった」という。「あさイチ」制作統括を務める石本達也氏に、“朝ドラ受け”への想いを聞いた。

10年以上の歴史 “朝ドラ受け”が愛される理由は?


“朝ドラ受け”の始まりは今から10年以上前、2010年3月29日の「あさイチ」スタートの頃に遡る。初代キャスターの有働由美子アナ(当時)と井ノ原快彦が自然に始めてから恒例となり、「あさイチ」の名物的展開に。それはMCが替わった今も続いている。

人気の理由について石本氏は「ある種のライブ感。多くの方に見てもらっている朝ドラをMCも一緒に見ていて、8時15分に終わった瞬間に皆で感想を共有できる…その“生感”が皆さんに支持していただけているのではないかと思います。あとは現在で言えば、華大さんの巧妙なやり取り。ドラマ好きで有名な華丸さんによる、そういう風に見ていたんだ、そう来ましたか、という感じのコメントを、習慣として求めていらっしゃる方が多いのかもしれません。また、うちの鈴木アナが号泣した回(笑)。視聴者の立場に本当に立ったらそうなりますよね、というものを、テレビを通して皆さんが共感してくださっているのかも」と分析する。

鈴木アナ号泣回とは、2021年11月25日。その日放送の朝ドラ「カムカムエヴリバディ」では、ヒロイン(上白石萌音)の父・金太(甲本雅裕)が死亡していたということがナレーションで伝えられた。「あさイチ』に番組が移ると、鈴木アナは口元を抑えて上を向き、涙をこらえ…。だが涙声で「ダメだ、もう…」と号泣を始めた事件だ。Twitterではトレンド入り。今も“神回”として伝えられている。

“朝ドラ受け”の話題について、番組中に200通以上のお便りが

鈴木奈穂子アナウンサー(C)NHK


これについて石本氏は「あれ以降、鈴木アナはプロとして、なるべく泣かないよう心がけ、朝ドラを見るときも、作品にのめり込みすぎないよう『泣き対策』をしています」と明かす。「NHKのアナウンサーとして、番組をちゃんと伝えなきゃいけないという誇りを持ってやっている。ですが私個人としては、今はアナウンサーやタレントでも、一人の人間としてその個性や感情を出せるようになった時代だと感じています。出演者が泣くことに関しても、視聴者と同じ時間を共有している、ある種のつながりを感じてもらえるという良さがある。私自身はあってもいいかな、と。――ちなみに裏話を話すと、あれ以降、泣いたときのためにティッシュを鈴木アナの近くに準備しています(笑)」

ほか石本氏が個人的に思い出深かった“朝ドラ受け”は、こんな例もある。
「最近でいうと、『カムカムエヴリバディ』で『回転焼き』が登場した回。大吉さんが『地域によって呼び方が違う』『お茶の間はその話題で持ち切りだと思う』と言ったら、番組中に『うちでは〇〇と言っている』と200通以上のFAX・メールが届きました。こういったことからも、視聴者とのつながりを感じられます」