<となりのチカラ>脚本・演出の遊川和彦氏が感じたドラマ制作の変化「僕はあえてその風潮に乗らない」

2022/02/22 13:00 配信

ドラマ インタビュー

「となりのチカラ」の脚本・演出を担当する遊川和彦氏(C)テレビ朝日

松本潤主演「となりのチカラ」(毎週木曜夜9:00-9:54、テレビ朝日系)の第4話が2月24日(木)に放送される。その放送を前に、今作で、脚本と演出を務める遊川和彦氏にインタビューを実施し、主演の松本やドラマ制作の秘話について聞いた。

本作は、思いやりと人間愛だけは人一倍、だけど何をしても中途半端で半人前(=中腰な男)、中越チカラ(松本)が、同じマンションに住む住人たちの悩みを解決し、やがてそのマンションが一つのコミュニティーとなって強いつながりを持っていく姿を描く社会派ホームドラマとなっている。

「松本さんがチカラくんでよかった」


――中越チカラというキャラクターが出来上がった経緯などを教えてください。

松本潤さんが主役で」という形でお話をいただきました。僕の過去の作品をご覧になっている方はご存じかと思うのですが、僕の作品では個性が強く、信念のある女性を主人公にしてきました。格好いい男性が格好いい姿で描かれていることに、リアリティーを感じないんです。

だからこそ彼(松本)が格好いい役を演じるということに、興味がありませんでした。「格好いい松本潤」というのは僕以外の他の方がたくさんやっているので、今回僕はあえて「弱腰の松本潤」を描くことにしました。

悩みすぎる男を松本潤さんに演じさせるのは、僕以外にいないだろうな、面白いだろうなと。また人が悩む姿というのは「中腰になる」ということだと思っていたので、彼がチカラくんとなってたくさん悩む姿はキュートになりそうな感じがしました。

悩み過ぎる男だから、他のドラマの主人公のように鮮やかには問題を解決できないのですが、なんとなく少しだけ周りの人の心に温かい火をともすみたいなそんな存在になるんじゃないかなというイメージも広がっていきました。

――松本さんが演じたチカラを見て、思い描いていたチカラとのイメージといかがでしたか?

最初はやはり松本さんにはチカラというキャラクターは合わないんじゃないかなと思っていましたが、本読みを始めてすぐ松本さんがチカラくんでよかったなと思いました。優しい人が優しい人をやるよりは、一見、人にも自分にも厳しそうでありあまり優しいというイメージがない人が優しい役をやるからこそ、その人の中にある「優しさ」がより鮮明に浮き出すように思えて、本当に松本さんがチカラくんでよかったなと感じましたし、チカラくんを演じるのはこの人しかいないと思わせてくれました。

――完璧なイメージがある松本さんを情けない男に仕上げることに苦労したこと、ご本人と話し合ったこと、要望したことなどは?

松本さんはチカラくんを演じることに苦労はされてました(笑)。チカラくんは松本さん自身とは全く正反対のキャラクターなので、「情けない男」といってもあざとくなってもいけないし、チカラくんをどういうふうに表現すればいいのかと悩んでいるというのは聞きました。

おせっかいな住人であるチカラくんがいい人のフリをして、いいことをやったというドラマにはしたくないという僕の思いをくみ取りながら、リアリティーの中の主人公としての魅力はどういうものなのか、たくさん悩まれたと思います。

また松本さんは普通に行動するだけで格好よく見えてしまうので、「格好いいから」という理由でNGを出しました。松本さん自体は自然に演じているだけなので、「え?どういうことですか?」と不思議がっていましたけど(笑)。

話ごとの最後のシーンで、ぱっと決まってしまうとチカラくんらしくないので松本さんには「最後のシーンは決めないでほしい」という要望を出したり、暗いシーンになると声が低くなってしまうので「声は高めに出して」と結構しつこく伝えていました。

関連人物