コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、叔父と姪の温かい関係をセリフなしのサイレント形式で描く「いつでも励ましてくれる君」をピックアップ。作者のナキエイドーさんが2022年2月19日にTwitterで同作を投稿。そのツイートには5万以上のいいねと共に、多くの反響コメントが寄せられた。この記事では、ナキエイドーさんにインタビューを行い、創作のきっかけやこだわりについて語ってもらった。
「連載会議ダメでした」―― 担当編集者からのメッセージを呆然と見つめる男性。そこにひとりの女子高校生が飛び込んで来る。コスプレ姿での自撮り、アイドルのライブ鑑賞…落ち込む男性を懸命に励ましてくれる彼女は、姪だった。
男性の誕生日、自分より若い漫画家が賞を受賞したというニュースが目に入る。自分の才能のなさに絶望しながらも、姪との日々を描いた漫画「いつでも励ましてくれる君」をSNSにポストする。すると、さっそく「今日のやつめちょ良き」と姪からメッセージが届き、男性は思わず涙を流す。
男性の描いた漫画に対しての反響が少しづつ増えてきていたある日、以前姪とふたりでライブ映像を鑑賞したアイドルから絶賛コメントが付く。そのコメントをきっかけに、男性のフォロワーは8倍に膨れ上がり、参加した同人誌の即売会では漫画を売り切ることができた。そして、ついに念願だった連載の依頼が届く。
うれしさと驚きが入り混じるなか、男性は姪とのこれまでを思い返す。よだれを垂らしながらおもちゃを握りしめる幼いころの姿、声をあげて泣きじゃくる姿、むすっとした表情で洋服選びに悩む姿…そんな姪の成長を見守ってきた時間が鮮やかによみがえる。あのときの姪と、いま目の前にいる姪の姿が重なり、男性は優しく微笑む。
そして迎えた編集者との打ち合わせの日。緊張した面持ちの男性を、姪が飛び切りの笑顔でぎゅっと抱きしめる。
やさぐれた叔父と、かわいらしい姪。ふたりの温かい関係を描いた物語に「身近にいる人の言葉が力になるって素敵」「ふたりの関係性が好き」「荒んでた心が浄化された」といったコメントのほか、「セリフなしでこの引き込み…天才」「喋らずとも喜怒哀楽が伝わってくる」など、キャラクターの感情を見事に表現した作品演出を称賛する声も寄せられている。
――作品が生まれたきっかけや理由をお教えください。ナキエイドーさんご自身の経験なども反映されているのでしょうか?
その頃作業していたストーリー漫画が終わり、息抜きに叔父と姪のらくがきをTwitterに掲載したところ、多くのインプレッションをいただき、少し掘り下げて描いてみようと思ったことがきっかけでした。自分には叔父はいないのですが、Twitterのタイムラインで「オタクに優しいギャル」というジャンルが流行っていて、それを自分なりに解釈して(姪ちゃんはギャルではないですが)「オタクの俺」「かわいい女の子」というキャラクターにしつつ、先日5歳になった自分の姪を愛しく思う気持ちを乗せて描きました。
――作品を描くうえでこだわった点や、「ここを見てほしい」というポイントがあればお教えください。
こだわりではないのですが、ほぼトーンを使わずに描いています。姪ちゃんと叔父さんについては「かわいい女の子」と「やさぐれたおじさん」という意識は常に持って作業していたので、私なりの解釈を見ていただければと思います。
自分の制作の信条として「当事者が読んでも違和感がないキャラクターにする」と「不快感をなるべく排除する」というのがあります。主人公の叔父に近い年齢の男性に話を聞いたり、お子さんがいらっしゃる知り合いの方にエピソードを聞いたり、できる限りのリサーチをしてプロットを作りました。また、作中のメッセージのやりとりやキャラクターの所作などもなるべく誰が見ても違和感のないように気を付けています。
――作中で特に気に入っているシーンがあれば、理由と共にお教えください。
主人公である叔父の回想シーンで、赤ちゃんのときの姪を描いたのですが、先述の通り、知り合いに話を聞きつつ、自分自身姪の変な顔や汚れた口を思い出しながら楽しく描けたのでお気に入りです。読んでくださった方から「自分と自分の姪が重なってウルッとしました」と温かいメッセージをいただいたりもして、描いた甲斐があったなあと思いました。
物語は自分(主人公)にとって気持ちの良いキャラクターや展開が望まれると思うのですが、どうしても現実味に欠けてしまう側面もあると思っています。その中で自分(主人公)である叔父を励ましてくれる人(姪ちゃん)をただの都合のいい存在で終わらせたくないなあと思い、姪ちゃんにとっても叔父が優しい存在で、相互に良く作用している関係であることを伝えたい意図で入れたシーンでした。
あとは同人誌即売会に行くシーンの姪ちゃんの表情がお調子者に描けたのでお気に入りです!
――本作はセリフなしのサイレント形式が印象的ですが、この点に込めた想いやこだわりがあればお教えください。
当初はここまでしっかり一本描くつもりはなく、別に掲載しているシリーズもあったので「アニメ映画の同時上映でやってる短編作品」みたいなイメージで描き始め、その上で短編といえばセリフなしだよなあと思いサイレントにしてみました。
いざセリフなしで始めてみると絵と流れだけで表現することの異常な難易度に気付かされて、サイレント作品作ってる人ってスゲー!と思いました(笑)。普段描く話は会話が多く冗長になりがちなため、個人的に課題としている部分なのですが、そういった部分でも今回のセリフなし漫画は「会話やモノローグで説明できない要素をどう補うか」の勉強になりました。
――今後の目標や展望をお聞かせください。
制作は救済なので、自分の救済を発信することがいろんな人の救済になればいいなあと思っています。また、今この叔父・姪で連載の企画を進めているので、それがうまく世に出るように頑張っています。
――作品を楽しみにしている読者へメッセージをお願いします。
制作物を見てくださる皆様、温かいメッセージをくださる皆様、いつも応援していただき本当にありがとうございます。今後ともよろしくお願いいたします。みんなで幸せになろうね。
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