――数多くの作品で共演をしている窪田さんの今回改めて感じた魅力や新たな発見は?
窪田さんとはさまざまな現場でご一緒してきたので、現場での立ち振る舞いやささいな配慮、視野の広さ、集中力を見てきました。逆に言うと奥の奥があるというのを知っているので、窪田さんをモニター越しで見ながら、このシーンではもう1個奥まで行ってもらおうと、すごく漠然と伝えても、微細なさじ加減で計算的ではない形にしてくれます。
原作で完結しているものをあえて実写化するのであれば、それを丁寧になぞるのではなく、生身の人間でまた別の世界観を創りあげるべきだと思っています。
主人公・清沢賢二像がこの映画のライフラインでありますが、窪田さんはコアな部分を捉えてくださっているので、本当に注文がほぼないです。撮影スタッフからも窪田さんの賢二は絶賛されていて、この時の賢二の表情が見たいということでシーンが増えていくほどです。
例えば、相手役に向き合う窪田さんの肩だけが映っているシーンがありましたが、肩だけでも十分に伝わってきたんですよね。どのパーツでも表現できるのだなと思いました。足の小指のみでも窪田正孝は成立させられるという、部位俳優ですね。全身がその状態になってくれているというか。本当に感動しました。
――この映画を楽しみにしている方々に対するメッセージを。
本作が企画からクランクインするまでに約3年程かかりました。監督という立場としては、何よりクリエイティブファースト・作品至上主義という形で強度のある作品にしていかないと、窪田さんをはじめ関わってくださった全てのキャスト・スタッフに本当のお礼にはならないことを肝に銘じています。
監督が「齊藤工」ということが独り歩きするような作品では僕は失敗だと思っています。国内はもちろんですが、斎藤工なんて存在や情報を知らない海外の厳しい映画ファンたちに突き刺さるような作品になって初めて、出演や関わっていただいた方たちへの唯一感謝の意になると思います。我々でしか生まれない化学反応、そういった意味合い、必然性のある強度を持った作品に創り上げたいなと思っています。