<フィッシュマンズ"HISTORY Of Fishmans"[Day.1] 1991-1994>まさかの未発表曲まで! 超貴重なレア曲が続出したライブを完全レポート

2022/03/07 06:00 配信

音楽

バンド苦難の時代に生み出された色褪せない名曲たち


MCで茂木は、「今日は“HISTORY Of Fishmans”[Day.1] 1991-1994ということで、初期のナンバーを中心に。二日間で一曲もかぶりがないっていうこのアイデアこのアイデアを考えた時、(メンバー間で)ものすごい盛り上がって。たくさんみんなでリハーサルしてきたんで、皆さん思いっきり体を委ねてもらったらうれしいです。最後までよろしくね!」と語りかける。

そして「それじゃ今から31年前、1991年にリリースしたフィッシュマンズのデビュー曲行きます」という言葉とともに“ひこうき”へ。やや初期のアレンジに近い軽やかさを携えたカラッとしたサウンドで、木暮やHAKASEのソロパートをより引き立たせていく。

「めちゃめちゃ気持ちいいな…」と茂木が不意につぶやく中、披露されたのは“いい言葉ちょうだい”。この曲でメインを務めた原田が歌い出した瞬間、観客から思わず声が漏れる場面も。近年のライブでは披露されていない楽曲だが、持ち前のダブサウンドが心地よく響きまったく古さを感じさせない。原曲の持つ普遍性が、アレンジを煮詰めても損なわれないことに改めて驚かされる。

続いては“土曜日の夜”。間奏において茂木と柏原が見せるスリリングなキメは本日もキレッキレ。木暮のギターもファンキーなサウンドで絡んでいき、観客の体を存分に揺らせていく。ダブ・ロックバンドという彼らの肩書きが最もよく体現された曲と言えるかもしれない。

そこから“RUNNING MAN”へ。原田と茂木のハーモニーや掛け合いは佐藤伸治存命時には当然見られなかったものだが、佐藤が歌詞として思い描いていた情景をより解像度高く表現できているようにも感じられ、非常にグッと来てしまう。


「そこにいる」ことを感じさせる最高の演奏

"HISTORY Of Fishmans"[Day.1] 1991-1994にて、ドラム、ボーカル、MCと大車輪の活躍を見せたフィッシュマンズ・茂木欣一 写真:西槇太一(※提供写真)


フロアの様子を見渡した茂木は、「いいね~LIQUIDROOM。大声出したいよね? バッチリ伝わってます! 今日(会場に)来てくれた人、配信で見てくれている人、フィッシュマンズのことを感じてくれている人たちに、今夜じっくりと届けていきたいと思います」と観客に語りかける。

そんな言葉に続いて披露されたのは“頼りない天使”。メインボーカルを原田が担う中、『98.12.28 男たちの別れ』を彷彿とさせるアレンジを展開。HAKASEが間奏で紡ぎ出す一音一音には、あの日キーボードを弾いていたHONZIが憑依しているようにすら感じられる。

そして、「1993年にフィッシュマンズは『Neo Yankees' Holiday』というアルバムを出しました。そこが僕らの分岐点になったなとすごい思うんですけど、そこから今日は、佐藤くんと一緒にライブをやれなくなってから一度もやってなかったんだけど、ぜひ奏でたいなと思った曲をやりたいと思います!」という茂木のMCから“疲れない人”をプレイ。

木暮のカッティングが印象的な軽快で明るいナンバーに、誰もがテンポ良く体を揺らしていく。厳密にリリース順で演奏しているわけではないものの、こうして初期のナンバーを立て続けに聴いてみると、茂木がこのアルバムを「分岐点になった」と語るのもよくわかる。

そんな中で、空気が一変したのは原田の歌った“救われる気持ち”。HAKASEがローズピアノ風の音色で伴奏するだけの穏やかなナンバーは、寂しさや切なさを湛えた夜にふと包み込んでくれるような、優しさに満ちた響きで感動的だった。