<フィッシュマンズ"HISTORY Of Fishmans"[Day.2] 1995-1998>「好きな曲しかない!」“王道”のセットでバンドの進化を見せつけたライブを完全レポート

2022/03/08 17:00 配信

音楽

珍しいギター演奏と“十八番”で原田郁子が躍動!

フィッシュマンズの影響をダイレクトに受けてきた世代である原田郁子も、近年のライブでは欠かせないメンバーに 写真:西槇太一(※提供写真)


このタイミングで、原田が率先してMCを。「フィッシュマンズ30周年おめでとうございます。世界中のファンの皆さんと今ここにいます。一曲一曲好きな曲しかなくて、噛み締めてます。好きな曲しかない!」と、自身が多大な影響を受けたバンドの一員としてライブに参加していることへの思いをシンプルな言葉で表現した。

そして「ギターは弾けないんですけど、やってみます」という原田の言葉から“IN THE FLIGHT”へ。原田の繊細なアコギ弾き語りで始まり、関口、HAKASE、木暮による上音が合わさった後、茂木と柏原のビートが乗ってくるという展開が実に心地よい。かつてHONZIが響かせた雄壮なバイオリンはHAKASEがキーボードで演奏し、楽曲にまた違った奥行きをもたらしてくれる。

さらに、終盤のジャムセッションからそのまま“WALKING IN THE RHYTHM”へ。この曲は途中まで「こんなにも展開に乏しい曲もない」という感じなのだが、ここに集った誰もが食い入るようにビートに身を預けてしまうこの引力たるや。

曲の終盤はリバーブを効かせたHAKASEのスペーシーなソロ、執拗な「WALKING IN THE RHYTHM」の合唱からのテンポダウンを経て、ギターがフィードバックノイズを響かせながら終わるという今までに聞いたことのない形。まだまだ進化が止まらないこの曲は、いずれ“LONG SEASON”に匹敵する長尺となるようにさえ思えてしまう。

そこから途切れることなく“Whether Report”へなだれ込む。ドロドロとしたビートから一転、軽やかに浮遊するようなビートに観客の動きもキレを取り戻す。原田は、もはや十八番と言っても過言ではないほど歌いこなしてきたこの曲を彼女ならではの色で染め上げ、演奏後は関口からも「最高!」という言葉が飛んだ。

ライブも終盤を迎える中、木暮がアコギに持ち変えて“SEASON”へ。近年のライブでは度々演奏されてきたこの曲だが、コロナ禍が続く中で人と会う機会もめっきり減り、これまで以上に季節が過ぎ去っていく早さを感じる昨今、この曲の聞こえ方も少し変わったのかもしれない。

「最高の夜です。みんなありがとね。最後の曲です」という茂木のシンプルな言葉から、披露されたのは名曲“ナイトクルージング”。ライブ盤『98.12.28 男たちの別れ』を彷彿とさせる演奏で、この「いかれちまった夜」を締めくくるのにふさわしい荘厳な音像を響かせてライブ本編が終了した。