――完成した作品をご覧になっていかがでしたか。
自分どうこう関係なく、とってもすてきな作品だなと思いました。苦しさとか切なさとか、そういうものも物語上もちろんあるんですけど、それ以上に画の美しさとか、人の心の内側の尊さや美しさとか、そういうものを教えてもらえるような作品だなって。
世界配信されるということなので、世界中の人々に「日本の映画ってすてきだな」って思ってもらえるんじゃないかなってワクワクしました。
――日本の映画のすてきなところというのは、若月さんはどんなところだと思いますか?
派手さとかよりも、淡かったり儚かったり、繊細さというか内側のものというか、そういうものを大事にしている印象があります。色で言うととても淡い色。ビビッドなカラーでパッと弾けるというよりも、ふわっと彩る感じの映画だなと思います。
――今作は原作のある作品ですが、撮影に入る前と後で作品に対する印象が変わったりはしましたか?
やっぱり自分だけで読んでるのとは違うなって思いましたね。脚本を頂いて、涙が出そうなくらい感情移入して読んだんですけど、それ以上に背景や衣装があって、俳優の皆さんがセリフとして言葉にする、その場面にいるともっといろんなことが見えてきて、自分が思っていたよりももっと広い、大きな作品なんだなってことを感じました。
――撮影で深川監督とはどんなことをお話ししたんですか?
深川監督は悩みを解決してくれるというか、本当に寄り添ってくれる監督で。今までいろんな役に1人で向き合ってきた中で、共感できる部分もあれば、なぜこのセリフを言うんだろう、自分だったら言わないのになってこととか、分からない問題もあったんですよね。そうなるとやっぱり1人じゃ答えが見つけ出せない時もあって。
深川監督はそれをくみ取ってくださって、「真琴って人はこうで」とか、「このときにはこう思って」とか、そういうことを一緒に丁寧に考えてくださって。それが腑に落ちたので、全てのセリフを真琴としてしっかり言葉に出せたと思います。
分からないことがあっても深川監督に聞いて、一緒に考えて、アドバイスをもらってっていう、とても信頼させていただき撮影に臨めました。
――悩みを解決してくれる監督ということですが、今作の撮影で悩んでいたことがあったんですか?
真琴は、ざっくりした言い方だと、クールで強くて凛とした芯のある女性というキャラクターなんですけど、実際女性としてそれ以外の面もいろいろあるんだろうなと思って、私の想像している真琴でいいのかを深川監督には相談させていただいたりしました。
例えば、山に晴人と一緒に行くシーンがあって、最後には晴人と会話をするんですけど、山を登ってるシーンでは一切会話をせず、私が先を行って晴人を待ってという形だったんです。セリフがない分、想像力を働かせてちゃんと自分がそこに真琴として立たないと物語として成り立たないというシーンで。
深川監督は、真琴という人は多分山登りも初めてじゃなくて何度も1人で風景の写真を撮りに来ていて、もう慣れていたり自分のルーティンができていたりする人だろうからって言ってくださったので、呼吸の仕方とか、歩き方とか、振り向き方とか、本当にそういう細かいところも相談させていただきました。
――山登りのシーンはやっぱり大変でしたか?
そうですね。その日は1日かけて山登りをして…でもこういうことなんだろうなって思いましたね。役を生きるって。
私がリアルにその時に「大変だな」って思うことは、きっとその役の人間も今まで「大変だな」って思ってきたことなのかなって思いました。
とってもいい経験になりましたし、私も普段は山に登る機会はなかなかないので、1人の人間としても面白い経験をさせていただいたなと思います。
――主人公の晴人を演じた中島健人さんとの共演はいかがでしたか。
実はドラマで一度だけ、同じシーンはほとんどなかったんですけど、ご一緒させていただいたことがあって、中島さんはそのことを覚えてくださっていて「お久しぶりです」って言ってくださりました。
中島さんにはとても引っ張っていただいたんですけど、実際は年齢が逆(※中島が年上だが、役柄では若月が先輩で中島が後輩)なんですよね。
それを忘れさせてくださるというか、本当に後輩に見えるようなお芝居をしてくださったりして、自然と私を真琴という“先輩”にしてくださったなって思います。
カメラが回っていないところでもすごく気遣いをされる方で、いろんなスタッフさんに対してとても丁寧にお話されているのを見て、俳優としてもとても勉強させてもらいました。
――普段は写真を撮られることの方が多いと思いますが、カメラマンという役柄は演じてみていかがでしたか?
今回は風景写真家だったので人物を撮ることがなかったんですけど、やっぱりプロってすごいなって思いましたね。簡単にシャッターを押しているようで、その1つで作品の全てが決まるっていう、何て責任のある仕事なんだろうって思いました。
今までたくさんの方に撮っていただいて、「すてきな写真ですね」って言うのは簡単だけど、その裏には構図とか光とか、いろんなことを考えて撮ってらっしゃるんだなって、自分が演じてみて感じました。
あと、こんなに力仕事なんだっていうことにも気付きました。機材とかは本物を使って撮影したんですけど、すごく重くて。でも、女性のカメラマンさんやアシスタントさんもいらっしゃるから、すごいなって。技術も必要だけどパワーも必要な仕事なんだなって、びっくりしましたね。
――今作は「桜のような僕の恋人」というタイトルですが、卒業式やお花見など、桜の季節の印象的な思い出はありますか?
東京に来てからお花見をしたことがないんですよね。だから、お花見をすることは夢ですし、夜桜も見てみたいですね。目黒川がきれいとか聞いたりはするんですけど、行ったことはなくて。
――あと、若月さんが撮ったものでも、誰かに撮ってもらったものでも、思い入れのある写真はありますか?
やっぱり写真集ですね。2冊出させていただいたんですけど、本当に私しか写っていない、私だけの写真集だったので、だからこそ普段何げなくやっている癖とかしぐさとか、そういうものが全部写っていて。それを自分で見る機会ってなかなかないので、自分のことを振り返るいい機会だったなって思います。
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