絶好調の『オモウマい店』総合演出と、裏番組の作家に聞くおもしろさの理由「ヒットの戦略も制作秘話もないんです」

2022/03/22 08:30 配信

バラエティー コラム

初回放送で登場した中華料理店「珉珉」の鈴子ママ (C)中京テレビ

個性的すぎる店主や、おもてなしがスゴすぎる飲食店を発掘する『ヒューマングルメンタリー オモウマい店』(毎週火・夜19:00-19:56、日本テレビ系列で)の視聴率が好調だ。「1時間のスペシャル番組を丸々使ってロングソフトクリームを食べ続ける人々を延々と放送し続けた回は、多くのテレビ業界人に衝撃を与えました。普通だったら怖くてできない」と、今回あえて話を聞いた裏番組の放送作家Aさんはそう語る。店主の懐に飛び込み物語を深堀りする手法は、制作を担当する「中京テレビ」で脈々と受け継がれてきたスタイルだ。カメラが映し出す光景には、ありきたりな予定調和を一切感じない。大ヒットのための戦略があったのだろうか? 番組スタートから1年が経とうとしている中、番組総合演出の2名に話を聞いてみたところ、意外な言葉が返ってきた。

裏番組の放送作家が語る『オモウマい店』の魅力

『弟子43人の蕎麦名人』シリーズ。「茂三郎」にて (C)中京テレビ


「『オモウマい店』は裏番組でありライバル番組です。しかし、テレビ離れが叫ばれる昨今、しかも視聴率を取るのに苦戦しがちな夜7時台に多くの視聴者をテレビに惹きつけることが出来た事実は、テレビ制作に携わる一人として素直に嬉しく思います」

そう話す放送作家Aさんが注目したのは、アシスタントディレクターが蕎麦店に弟子入りする『弟子43人の蕎麦名人』シリーズだという。

「ディレクターと取材対象者という垣根を越えて、友だちなの? 家族なの?と思うほどの関係性を築いている。だからこそ見えてくる嘘のない物語に、ちゃんとカメラを向けていますよね。ここまで同じ店を何度も取り上げるグルメ関連番組はこれまでなかったのでは? MCのヒロミさんや小峠英二さんが『また出てきたよ、このオジサン!』と番組常連の店主をキャラ付けしているのも視聴習慣につながっていると思います」(放送作家Aさん)

ナレーションの代わりに耳に飛び込んでくる、番組MCやゲストによる臨場感溢れるリアクションも好評だ。おかげで視聴者自身が店を訪れた視点でVTRに没入できる。

「もちろんナレーションによって面白くなる番組も数多く存在します。しかし『オモウマい店』はグルメ番組にありがちな食材の情報や調理法を一切ナレーションで説明しない。そこがオリジナリティですよね。これを機に他のジャンルでも“固定概念”に囚われない新しいスタイルの番組が増えていくかもしれませんね」(放送作家Aさん)

14年ぶりに中京テレビが担当した全国放送番組

(写真右から)総合演出の加藤さん、竹内さん (C)中京テレビ


『オモウマい店』には、中京テレビが自社制作する名古屋の人気ローカルバラエティ番組『PS純金』の制作スタイルが受け継がれている。ヒットの理由を総合演出の加藤優一さん、竹内翔さんに聞いてみると、「うちの局では昔からこの方法で番組をつくっていますから、特にヒット戦略のようなものはありません…」という言葉が返ってきた。

昔から受け継がれてきた中京テレビの制作スタイルとはどんなものだろうか?

「最初にそのお店を見つけたADやディレクターが、リサーチも撮影も一貫して最後まで担当し、関係を深めていくことを大切にしています」(竹内さん)

「全国放送の番組ではAD、ディレクター、リサーチャーなど、きっちり分業制だという話は聞いたことがありますが、僕らは他局に知り合いもいないし、自分たちのやり方が特別なのかどうか正直分からないんです」(加藤さん)

基本的には撮影のアポは取らない。普段気さくにしゃべっている店主も、カメラが回った途端に表情がこわばってしまうからだ。カメラは家庭用のコンパクトなものに変え、料理やインタビューを撮る前の説明やアナウンスも極力していない。