ジムにはアイドルからの反響も大きく、「20名来ればいいかなと思ってました」(竹中さん)というところ、既に150名を超える申し込みがあった。現役アイドルの他、これからデビューするアイドルの卵や、VTuberなど生身の肉体以外で活動しているアイドルも多数参加予定だという。アイドル専用ジムとして、カリキュラムや運営面で工夫している点を聞いた。
「たとえば私が担当するダンスの基礎トレーニングでは、アイドル活動の中では省かれがちだけど重要な、地味な身体の使い方の基礎をやっていく予定です。ウォーミングアップやクールダウンについては、対バンのイベントだと楽屋が狭くて、床に寝転がったり座ったりという動きはできないから、基本の動きに加えて、立ちっぱなしでできる動きも教えます」(竹中さん)
運営のシステム面でも、情報管理の工夫がなされている。
「セキュリティの面は重視しています。活動休止中などの事情でジムに通っていること自体を知られたくないという方もいると思うので、匿名で参加できるクラスも作る予定です。また、なるべく活動レベルや内容の近い方を集めてクラスを作ることで、濃密な内容のレッスンにしたいと思っています」(円谷さん)
「遠藤さん、酒井さんや私もずっと現場を見てきていますし、他にもつい最近まで自分がアイドルとして活動していたSHOWROOMスタッフさんもいるので、すごくリアルに、かゆいところに手が届くシステム作りを心がけています」(竹中さん)
竹中さんは長年「アイドルの健康」について発信し続けてきたが、数年前と比べて発信が届きやすくなったと感じている。その理由のひとつが、遠藤さん・酒井さんのような、アイドルを引退後も指導者として業界に残る「元アイドル」の存在だ。
「昔は私がひとりでケアの大切さを訴えても、口うるさいと思われがちだったんです。でも元アイドルで賛同してくれる子たちが増えたことで、経験者の意見として説得力が増して、より広く耳を傾けてもらえるようになりました」(竹中さん)これはアイドルブームが成熟したからこそ生じたポジティブな変化といえるだろう。
竹中さんがアイドルの健康について問題提起し続けるのは、「アイドルでなくなった後も人生は続く」という意識を強く持っているためだ。
「アイドルをやめて別の仕事をしている子たちから『元アイドルという理由でバカにされる』と聞くことがあって。絶対そんなことないのにな、そんな思いをさせたくないなってすごく心が痛かった。そんなときに、元アイドルで、今はヨガインストラクターをしている子がイベントに呼んでくれて。当日、彼女はまだ先生になりたてなのに、すごく大勢の生徒さんを前に堂々と指導していました。イベントが終わった後、彼女が『先生、アイドルまじめに何年か続けてきたら、何にでもなれるよ』と言ったんです。私自身、そう感じてくれたらいいなと思いながら指導してきたので、すごくうれしかった。そして、なるべく多くのアイドルの子たちにそういう体験をさせてあげたいなと思いました」
芸能界に残ることだけが人生の正解ではない。遠藤さんや酒井さんのように、別の形で輝く元アイドルの姿を間近で見ることも、現役アイドルたちにとって、ひとつのロールモデルとなるだろう。
最後に竹中さんに今後やりたいことを尋ねると、「アイドル用のスポーツブラを作りたいです!」という答えが返ってきた。「動きやすくて、ステージでつけられるように肌色になじみやすかったり、ストラップレスにできるような。スポブラの重要性はまだあまり知られていないので、ジムを通じて、ちゃんとしたブラをつけることの大事さを伝えていきたいです」
すべてのアイドルが心身健やかに活動できるその日まで、竹中さんとアイドル専用ジムの挑戦は続く。
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