――「安子」として役を演じるうえで心掛けたことを教えてください。
役作りのためにしたことは、ドラマの中の安子(上白石萌音)を見ていたこと。どういう風に育って、どういういきさつでアメリカに行ったかということや、安子がしゃべる雰囲気とか、そういうところを見ていました。でも、結局自分っぽくなっちゃうものですからね。まねができるというものでもないですし、50年、60年のあいだに人も変わると思います。逆に、安子がアメリカに行ったあとの放送は見ていないんです。
「お、ちょっとこれ見ちゃいけない」と思って、途中で視聴を止めました。私が知る必要がない内容だと思ったんです。安子はアメリカに行ってあえて日本に背を向けている。だから、ドラマで描かれている出来事をあまり情報として自分の中に入れてしまわない方が、そのまま安子が年をとってアニーになった感じが出せると思ったんです。だから、演じていて安子の気持ちのままで日本に戻って、アニーになっているような感覚です。
――「安子」についての印象を教えてください。
安子は生まれてアメリカに行くまで、家柄の差や戦争など、いろんなことに阻まれてスッと生きては来られなかった。それを思うと、本当に切ないです。稔さんのことも、ずっと大事だったと思います。一番最初に好きになった人とようやく一緒になれた喜びと、その大切な人があっというまに戦争にいって帰ってこなかった切なさは本当にやるせない。言葉に表せないくらい辛かっただろうと思うし、そういう方達があの当時たくさんいらしたんだろうなと思います。これだけの辛い思いをした人がたくさんいた、という戦争に対するメッセージにもつながっていますよね。人の気持ちや人の歩んでいく道筋、心向きが繊細に描かれているので、ひとつひとつのせりふに感動しています。