斎藤工「“正座して見るもの”は意外と残らない」社会的テーマを軽やかなエンタメで描く意義

2022/05/04 10:00 配信

ドラマ インタビュー

俳優は“もしも”を生きる生業「難解な役を演じた感覚は全くない」


――つわりなど、妊娠中の表現にすごくリアリティーがありました。役作りはどのように行ったのでしょうか?

斎藤:“男性だから”という概念でキャラクターを作ったというよりは、僕自身が目の当たりにしてきた妊娠・出産というものをトレースして表現していきました。監督の実体験だったり、僕の場合は身近にいる親戚だったり。皆さんもそうですが、僕自身も母から生まれ出た体験をしていますからね。“もしも自分だったら”ということが僕ら俳優の生業でもあるので、性別の壁はあまり意識しませんでした。そしてその“もしも”のモデルが自分の家族だった。自分の目に映って、心で感じてきた出産に向かう人の変化や葛藤には、さまざまなモデルがいてくれたので、難解な役を演じたという感覚は全くありません。

――“スマートに生きる”ことを信条としていた桧山は、妊娠を機に心も価値観も変化していきます。斎藤さんはその変化をどう受け止めて撮影に臨みましたか?

斎藤:僕は普段映画やドラマを見るときに、自分が男性だからといって必ずしも男性のキャラクターに感情移入するというわけではなくて。最近だと「コーダ あいのうた」(2021年)とか「スウィート17モンスター」(2016年)とか、僕はもういい歳ですが、ティーンエイジャーの女性主人公に感情移入していたりするんですね。なのでエンターテインメント作品の中では、自分に近いキャラクターを探すというよりは、ある側面を“もらう”という感覚が大きい。昔、姉と一緒におままごとをしていたときからそんな感じでした(笑)。そういう意味で、この作品には、職場や学校、家庭…普段見ない確度から自分の環境を見てみたり、そこで1日“お母さん”や“お父さん”を体験してみたり。そういう役割、責務があるのかなと思って撮影に臨みました。

「ヒヤマケンタロウの妊娠」ティザーアート


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