――作品の魅力を教えてください。
藤原:柄本明さん演じる理髪店の店主が歩んできた人生を、その話を聞いている青年を通して存分に味わえることだと思います。戦中、戦後、70年代から現在に至るまで、時代を彩る美術や画作りもすてきですし、何よりその時代の空気感、人同士の密度というものを大好きな俳優さんたちが体現されていて、ドラマを見ながらとてもぜいたくな時間を過ごさせていただきました。
――撮影中、お互い演技についてお話はされたのでしょうか?
柄本:藤原季節さんに限らず、監督や他の出演者の方とは現場では(演技については)特に話さず撮影しました。
藤原:どのように撮影に臨んだかといえば、何も考えずに臨みました。僕の小さな頭で考えるよりは柄本さんと同じ空気をただ吸おうと。それ以外のことは何もしないように注意しました。撮影中は演技について話したというよりは、もっといろんな話を聞かせていただきました。それはもう楽しくて笑いが止まりませんでした。あの日から僕の心や体には柄本さんの影響がずっと残っています。
――演じる上で工夫された点、難しかった点などがあれば教えてください。
柄本:この作品に限らず、役を演じる際は年齢・職業がバラバラなのでいつも苦労しています。今回は理容師の役だったので理容所作には苦労しました。事前に資料を見て勉強したり、実際に理容指導を何度も行ってもらいました。
藤原:何もしないように、ただそれだけを心掛けました。柄本さんがポロッと「これだけカメラに囲まれてると何かしたくなっちゃうよね」とおっしゃって、これは何もするなというサインかなと勝手に解釈しました。柄本さんが演じる店主の言葉を聞いてるうちに、気付いたら涙が出てくるような時間があって、新しい自分に出会ったこの瞬間は大切にしようと思いました。
――読者の方々にメッセージをお願いいたします。
柄本:楽しく見て頂ければ役者冥利(みょうり)につきます。
藤原:理髪店に流れる心地よい空気と、店主と青年の間に流れる緊張感が同居する、重厚なドラマに仕上がったと思います。それぞれの時代の空気感や俳優陣も素晴らしいです。ぜひ、部屋を暗くして、少し大きめの音で、店主の言葉を堪能してみてください。そうすればラストシーンにはきっと美しい瞬間に導かれるのではないかと思います。
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