映画「流浪の月」フレッシャーズ試写会が5月8日に都内で行われ、W主演を務める広瀬すずと松坂桃李が登壇した。
本作は、2020年本屋大賞を受賞し、同年の年間ベストセラー1位(日販単行本フィクション部門、トーハン単行本文芸書部門)に輝いた凪良ゆうの小説を、「フラガール」「悪人」などを手掛けた李相日監督が映画化したもの。
10歳の時以来、誘拐事件の“被害者”というレッテルを貼られて生きてきた家内更紗を広瀬が、その事件の“加害者”としてレッテルを貼られて生きてきた当時19歳の青年・佐伯文を松坂が演じている。
この日は、この春から働き始めた52人の“フレッシャーズ(新社会人)”が作品を鑑賞。上映後、登壇した広瀬は「同世代の皆さんに、この作品がどう映って、どう届いたのか、すごく気になります」と話し、松坂も「この空間にいられるのがすごくうれしいです。映画の感想を全員に聞く時間はないですよね」と語り、「SNSに感想を投稿してくれたら全部見ます」と約束した。
フレッシャーズにかけて、今回の作品での“初めて”を聞かれると、松坂は「李さんと初めてというのが大きかったです」と答え、「1シーン1シーンを正面から向き合ってじっくり煮詰める感じで、“スケジュールなんて気にしなくていいから”っていうのを自然と感じさせてくれたので、こちらも役と作品に没入できました。あっという間に時間が過ぎて、気付いたらすごく疲れている。そういう現場は初めてだったので貴重でした」と、撮影時を振り返った。
その話を聞いて、映画「怒り」で李監督作品を経験している広瀬は「(『怒り』の)初日が1カットも撮れずに終わって、次の日、引きの画を3カットだけとってもらっただけで15時間寝たんです(笑)。エネルギーを使ったんでしょうね。体力もそうですけど、役を通してすごく精神的にも来たり、エネルギーを溜めながら放出するという作業の連続でした」と、松坂の意見に同意した。
広瀬の“初めて”は「血のり」で、「あんなにガッツリ血のりをやったことがなくて、うれしかったです(笑)」と笑顔で回答。
「毎日現場にいたら血のりをつけていたんですけど、そのままお昼ご飯を食べたり、ちょっと街を移動して現場に向かっていてもいろんな人に見られたので、フェイスシールドからマスクに替えました(笑)」と大変さも伝えながらも、「思い出として『血のりしたなぁ』って。『あ、映画だな!』って思いました(笑)」と、良い思い出になった様子を感じさせた。
さらに、「ゾンビ映画とか大変そうだな」と話すと、松坂は「血のりは乾くと大変だから」と言いつつも、「ゾンビ、やりたいです(笑)」とゾンビ映画にも興味津々だった。
もう一つ、フレッシャーズにかけて“初めての現場で心掛けていること”も明かした。
松坂は「聞くこと」と言い、「とにかく新しい仕事、新しい現場に入った時は自分はゼロの状態なので、監督の言葉を聞くのも大事ですけど、各部署の人がどういうスタンスで作品に取り組んでいるのか、こだわりがあるのかを“聞く”ことがすごく大事だと思います」と言う。
「ある意味、一つの現場は一つの組織みたいになっているので、その中で自分が初めて入っていった時にまずやれることは、周りの人たち…、先輩方とか後輩、同年代も含めて、聞くことが僕は大事だと思います」と、フレッシャーズへのアドバイスとも取れる内容を語った。
広瀬は「素晴らし過ぎて、この後しゃべりたくないんですけど(笑)」と言いながらも、「見ること」と自身の答えを発表。「観察するのが元々のくせでもあるんですけど、“聞く”と同じで、なんとなくで良いのでざっくりと人柄まで分かったらいいな思っています。台本にしかスタッフさんは名前が書かれてないので、みんなが呼んでる名前とかあだ名とか、見ることで特徴を捉えられたり、名前を覚えられたら。“お芝居も気持ちよくできる状況に全員がいる”ということは、作品のために意識しています」と理由を説明した。
松坂は、「聞くことも見ることも、そこになじめるようにというか、そこのスタートラインに立てるようにする“ほぐし”みたいな感じですね」と自身の回答と広瀬の回答を包括して語った。
映画「流浪の月」は5月13日(金)より全国公開。
◆取材・文=田中隆信