橋本愛、“心臓にレモンを搾った”ような刺激を映画史に刻む【てれびのスキマ】

2022/06/01 05:30 配信

芸能一般 コラム

橋本愛※2019年ザテレビジョン撮影


 橋本のカルチャー好きは映画に留まらない。お笑い好きとしても知られ、ハリウッドザコシショウの単独ライブに毎年のように行っていることも自身の連載で明かしている。その感想を「性根がタブーを好むところに非常に通じるものを感じました」(「POPEYE」2017年10月号)、「しつこさの限界点を掌握していた」(同誌、2018年10月号)などと鋭い感性で綴っている。彼女の類まれな言語感覚と表現の巧みさがうかがえる。それは「言葉にできない、そんな夜。」(2022年4月8日NHK Eテレ)に出演した際にも発揮された。たとえば「サザエさんが年下なことを知ったときの気持ち」を「彼女は不可逆な時間の中で、つっかえ棒のようにして立っている。その距離が開いていくほど、どうしようもなく焦ってしまう」と独特な語彙で表現し、「懐かしい音楽を聞いたときの気持ち」を「レモンを搾った感じなんですよね、心臓に」と絶妙な形容をして、小説家や作詞もするミュージシャンなど言葉のプロもいた共演者たちを驚かせた。それは日々、トガッたカルチャーを吸収し続けてきたからこそ得られたものだろう。
 言葉が好きで「こう思うことでこんなに生きやすくなるんだって」「言葉によって救われてきた」(「SWITCHインタビュー 達人達」=前出)という橋本愛は、言葉を大事にすることで繊細な演技で、“心臓にレモンを搾った”ような刺激を映画史に刻んでいるのだ。

文=てれびのスキマ
1978年生まれ。テレビっ子。ライター。雑誌やWEBでテレビに関する連載多数。著書に「1989年のテレビっ子」、「タモリ学」など。近著に「全部やれ。日本テレビえげつない勝ち方」

※『月刊ザテレビジョン』2022年7月号