田中道子、アドリブ満載の現場に驚き「容赦なくごちゃごちゃするんですよ(笑)」<極主夫道 ザ・シネマ>

2022/06/04 07:30 配信

映画 独占

田中道子 撮影:ブルータス海田

テンションが高くて明るい現場でした


――連ドラから約1年半がたちますが、劇場版へ向けて今の心境は?

明るいコメディー作品で、家族ものということもあって、ドラマの撮影期間中から皆さんとの距離が近い現場で、キャスト・スタッフの皆さんそれぞれ「これはスケールを大きくして映画化したいね」と口にしていらしたんです。それが1年半の時を経て実際に映画化されて、とてもうれしかったですし、現場で再会したときも皆さんのテンションが高くて明るい現場でした。

ただ、ドラマの撮影当時、コロナ禍で緊急事態宣言が出されて、解除されたけど今後どうなることやら…という時期だったのでちょっと落ち込んでいたんです。私は婦人会の会長役のMEGUMIさんとご一緒させていただくシーンが多かったので、その時は会うたびにMEGUMIさんにいろいろ相談していました。

そしたらMEGUMIさんは「このアロマいいよ!落ち着くから寝る前につけてみな」と明るく話してくださって(笑)、私のことを心配していろいろと世話を焼いてくださいました。1年半ぶりにお会いした時も、「あれからどう?」と心配してくださって、そういう関係性がうれしかったです。

ドラマの共演者の方とそういう関係性が築けたのは初めてですし、これまで連続ドラマのシリーズものに続けて出たことがなくて「続編」を経験したこともなかったので、スタッフさんも含めて「絆」ができたことが何よりうれしかったです

――なるほど!MEGUMIさんとの関係は、劇中の関係性ともちょっと似ている感じなんですね。

そうなんですよ!「あんたちょっとさ~」「何ですか!?」「ちょっとサウナにでも行ってきな!ととのうから」「はい!行ってみます」みたいな(笑)。私が欲しい言葉をくださったり、不安なことを共感してくださったり、MEGUMIさんには本当にお世話になっちゃいました。

――そういう関係性が築けているということは、久々の撮影でも太田佳世に戻るのは早かったですか?

そうですね。それに準備運動もないままにいきなりスケールの大きいシーンから映画版の撮影が始まったんです(笑)。お金もかかっていて、とてもエネルギーの要るシーンを最初にやらせていただいたんですけど、私に限らず皆さんすぐに“戻った”といいますか、1年のブランクを感じさせない雰囲気でした。

――あらためて田中さん演じる佳世の魅力は?

佳世はこの作品の中で唯一まともなキャラなんです(笑)。「ちゃんと極道が怖い主婦」というのが最初の設定だったんですけど、ドラマの後半ぐらいから佳世も極道に慣れてきちゃって、ビンタするし、叫ぶし、キレるし、だんだんみんなのぶっ飛び具合に染められていく。でも、なるべく普通の主婦ならこういう反応をするだろうな、という部分は気を付けて演じました。

映画版では、皆さんがさらにハイテンションで、120%“殻を破る演技”をされるので、私も120%で応えないと見てくださる人が違和感を覚えてしまう。テンションを合わせるために、ドラマの時よりも激しく、皆さんと同じくらいぶっ飛ぶ“大きい演技”をしました。

――そういう意味では、逆に序盤は大変でしたよね。テンションMAXの皆さんの前でまともな方を演じるという。

最初はどうしたらいいんだろうって迷うシーンも多かったです。同じ主婦仲間のはずの会長(MEGUMI)はすぐ極道になじんじゃうし(笑)。私の役はそれを止めないといけないんですけど、高いテンションは維持する、という。正直戸惑う部分も多かったですけど、監督や竹中直人さんが演技に関して相談に乗ってくださって、たくさんアドバイスを頂きました。

竹中さんは普段おちゃめな方なんですけど、そういう場面ではビシッとしたアドバイスをくださって、「間が大事」ということを教わりました。習得できたかといわれるとまだ分かりませんが、バラエティーにも通用する部分だと思います。それ以来、普段の生活から「間」に気を付けるようにしています。お客さんが笑いたい瞬間を邪魔しない「間」。まだまだ難しいです。

――相手がいてこそですしね。ドラマでも、どこまでが台本通りなのか、アドリブなのか、楽しそうなやりとり過ぎて見ている側では分からない場面も結構ありました(笑)。

それで言うと、コミカルな場面はほぼアドリブです(笑)。台本に「ここからごちゃごちゃする」って書いてあるだけだったので(笑)。最初に台本をもらったとき驚きました。監督は皆さんと違う現場でもコメディーを一緒にやられているので、理解してくれると分かっていて信頼の意味で「ごちゃごちゃする」って書かれていると思うんですけど、私は初めてだったので、探り探りいってしまったんです。

でも、皆さんは「ごちゃごちゃする」のプロで、容赦なくごちゃごちゃするんですよ(笑)。それこそドラマの初日から、台本通りに演じても監督のOKが出ないんです。そこでアドリブでオチまでつなげる、というスキルをMEGUMIさんや竹中さんから学びました。カットがかかる前はほとんどアドリブでした(笑)。 

――初参加でそれはハードルが高い!(笑)

そうですね。それに私、これまでは基本台本通りに演じる現場が多かったので、初めてこういうアドリブ合戦コメディーだったので、最初はつらかったですけど、後半からはアドリブにもスッと返せるようになって、成長したなと実感できました。映画になってもその感覚を忘れることなく続けられたので安心しました。案の定、映画の台本も「ごちゃごちゃする」とか「この後もにょもにょ」って書かれていたので(笑)。

西田敏行のアドリブに「何もできませんでした(笑)」


――アドリブで返せるようになったということは、ご自身の中でキャラクターが体に染みついているということですもんね。

体に入り込んでいるというとまだまだな気はするんですけど、アドリブは慣れていないとちゃんと返せないので。それは「ドクターX~外科医・大門未知子~ 第4シリーズ」(2016年、テレビ朝日系)に出たときに、西田敏行さんから学ばせていただいて…。

――ああ、西田さんといえばアドリブですよね(笑)。

そうなんですよ!もうトラウマレベルで何もできませんでした(笑)。いまだにあの時の悪夢を見るくらいで…。無理に面白くしようと思わず、素直に一言でいいからとにかく返事を返す、ということができるようになったのが、自分としては上達したと思います。

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