チャンネル登録者数37万人を超える陰キャ系YouTuber・コスメティック田中。千葉大学工学部卒という経歴を持ち、IT系企業で働く傍ら、ひとり行動を楽しむ姿や、理工学・内向的な性格に関する動画を発信している。そんな彼が、著書『群れずに心穏やかに生きる 正しい孤独マインド入門』を2022年5月25日に出版した。「高校、大学と友達がいなかった」「ひとりは好きだけれど、他人に全く構ってもらいないのはいや」だと公言しているコスメティック田中に、孤独との向き合い方や本書への思いを聞いた。
――まずはYouTubeを始めたきっかけを教えてください。
中学生の頃に、兄の影響でYouTubeを見るようになり、当時ははじめしゃちょーやワタナベマホト、東海オンエア、桐崎栄二などのYouTuberをよく見ていました。
次第に「自分もインターネットで自己表現をしたい」といった思いが生まれ、中学・高校時代から、動画を投降したり、オリジナル曲のMVを制作してアップしたり、ブログで日常を発信したりしてきました。
本格的にYouTubeに取り組もうと、現在のチャンネルを開設したのは就職してからです。学生時代の「陰キャ」「ぼっち」の捉え方が、就活や就職を通して変わっていったのは大きかったですね。学校や職場といった限られたコミュニティーの中ではなく、もっと世界全体に認められたいという思いも強くありました。
――「コスメティック田中」という名前の由来が気になります。
昔、TikTokで美容に関する情報発信をしていた名残りです。TikTokは若い女性の視聴者層が多いと思ったので、彼女たちの共感を得ようとそのテーマを扱うことにしました。当時はコスメや美容についてかなり勉強していましたね。そのときの名前を使い続けていますが、現在は美容や化粧品に関する発信は一切行っておりません。
――動画では、一人で過ごした学生時代の経験や心情も話されていますね。
今となっては孤独だった過去をコンテンツとして面白おかしく紹介していますが、当時の精神状態は良くありませんでした。それでも学校に通い続けたのは、不登校になると進路や将来に響くかもしれないし、親に心配もかけたくないからです。何より、クラスの中で「あいつ学校に耐えられなかったんだな」と思われることでの敗北感を味わいたくなかったんです。そもそも集団の中にいなければ「ぼっち」じゃないからなんとも思わないんですけど、集団の中にいると「あの人、ぼっちだね」と哀れみの目で見られるんですよね。社会に出るとそうでもないですが、学生時代は本当にそう思っている人が多いように感じました。
――それらの経験を基にした初の著書『群れずに心穏やかに生きる 正しい孤独マインド入門』は、どのようなことを考えて執筆されましたか?
YouTubeでは、視聴者の方に「救われました」などといった言葉をもらうことがあります。ですが、私にはそういった方々を「救おう」などという気持ちがあるわけでなく、自分がやりたいことをやっているだけにすぎません。
ただ、今回書籍の話をいただき、自分がどういった人と向き合うべきかを考えました。「本を出したら失望する」「金稼ぎ目的」といったマイナスな声をいただく一方で、人間関係に関する相談を受けることも多いです。前を向こうとしている方に何か価値のある情報を与えられるなら、それは決して悪いことではないですし、本を読もうとしてくれる方にこそ自己表現をした方が、自分にとって有益なのではないかと思い、受けることにしました。
悩んでいる方に、私が偉そうにアドバイスするのはおこがましいとは思いますが、少しでもみなさんのマインドに変化を起こせたら幸いです。
――孤独な人の分析から始まり、人とのつながり方、最適な生き方など、さまざまな角度から孤独と向き合っており、悩みを抱える人にとっては救いとなる一冊だと感じます。
ドヤ顔でさまざまな思考だとかテクニックだとかを書きましたが、この本でもっとも強調したいのは、「孤独は最強の筋トレ」であるということです。インターネットが発達している現代では、情報収集に困ることは少なくなり、「自分一人が取り残されるのではないか」という不安は、限られた場面以外では杞憂になります。むしろ、孤独から得られるものがあるということを伝えたいです。
例えば、若いうちから一人で過ごしていると、どんなことも「自分がやるしかない」という思考に行きつきます。しかし、何事にも一人で食らいついていくことで、結果として自分の実力や自己効力感が高められると思っています。
また、一人で過ごすことで、自分という人間のベース体力や自制心を鍛えることもできます。全ての物事において、この「基礎体力」は大事だと考えています。
――現在、仕事とYouTubeを両立されていますが、自身の中ではそれぞれどんな役割ですか?
YouTubeはあくまで趣味であって、一生をかけてやるものではないと思っています。自分の中の可能性を深めているのが仕事で、広げているのがYouTubeだと。ただ今後は、どちらも変化していくだろうなとは思っています。自分の気持ちが変わるかもしれませんし、外的要因もあるかもしれませんし。
――YouTubeの活動は今後、どのように取り組んでいく予定ですか?
今は自分がどうなりたいかよりも、視聴者のみなさんがどう思うかと考えているところはありますね。今のような形態で、末永く続けていられればそれでいいかなと思います。
取材・文=Rum
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