「エピソード1~3」では、まだ比較的若いオビ=ワンがアナキンと出会い、アナキンを弟のように可愛がりながら悪の帝王シス卿に立ち向かっていく姿が描かれてきた。日本語吹き替え版で聞くことができる森川の低く落ち着いた声は、血気盛んなアナキンとは対照的。オビ=ワンが冷静沈着で、かつ強いフォースを持つ選ばれた存在であることに説得力を与えている。
「エピソード3」のクライマックス、有名なオビ=ワンとアナキンの死闘シーンを日本語吹き替えで聞くと、森川演じるオビ=ワンの「弟だと思っていた。…愛していた」という言葉にアナキンへの愛情と深い悲しみがにじんでいるのがわかる。
一方、ドラマ「オビ=ワン・ケノービ」で視聴者は、そんな頼りがいのある人物像とは少し違ったオビ=ワンと出会うことになる。
アナキンが暗黒卿“ダース・ベイダー”と化したとは知らず、10年もの間、アナキンとの別れに傷ついたまま罪悪感を抱いて暮らしていたオビ=ワン。かつての気高く強いイメージはなく、孤独で、悲哀と後悔に満ちている。
2022年5月に米ロサンゼルスで行われたイベント「スター・ウォーズ・セレブレーション」に登場したユアンはドラマでのオビ=ワンについて「新三部作で僕は、賢くて落ち着いた男を演じましたが、本作(ドラマ)では彼を映画とは違うところに連れていったのです。暗くて、壊れているところへ。それは簡単なことではありませんでした」と語ったが、森川の声にも、そうした鬱屈した雰囲気が宿る。
街で偶然姿を見られオビ=ワンだと気づいた若者ナリに「偉大なジェダイでしょ?」と問いかけられても「ジェダイの時代は終わったんだ」と投げやりに言うばかり。ジェダイマスターとしてアナキンを導いていた頃の若々しく頼もしい口調はすっかり影を潜めている。
だが、もちろんそのままで終わるオビ=ワンではない。ドラマ2話以降、レイアが誘拐されたことをきっかけにオビ=ワンに10年ぶりに活躍の機会が訪れる。レイアを保護した後は、賢く愛らしいレイアの物言いに「10歳らしくないな」と苦笑しながらも声の調子に少しずつ明るさが戻り、寂しげだったオビ=ワンの再生を予感させる。
この記事の関連情報はこちら(WEBサイト ザテレビジョン)