「TVerという場でもっと遊んでもらいたい」テレビの力を最大限発揮するためのオリジナルコンテンツとは

今では観られない貴重な映像や、中堅芸人のMC力の試金石にも

「ロンハー」より(C)テレビ朝日


オリジナルコンテンツに話を戻すと、放送局の作り手の力を信じているので、TVer側はできるだけ内容には口出しはしないという。TVerはあくまでもプラットフォームであり、局の力を最大限に引き出す場と考えるからだ。そしてオリジナルからレギュラー番組にユーザーを誘導することも狙っている。

まずは「ロンハー」から見ていこう。これは過去の傑作選を、ロンブー淳が当時のゲストと振り返る番組だが、厳選されたエピソードゆえに“面白い”のはもちろんのこと、例えば、今ではMCなどの立ち位置が主になり、体を張る芸が見られなくなった有吉弘行やバカリズムが、熱湯を浴びたり粉まみれになる、おぎやはぎがカースタントに挑戦する、また麒麟・川島がバンジー、ドッキリのリアクションをするなど、今となっては貴重な映像が観られる。

次に「クセスゴ」。もともと千鳥MCの番組だが、同コンテンツでは、見取り図演じる“南大阪のカスカップル”力也と綾、アキナ演じる“雰囲気が強すぎる小学生”山名くんと秋山くんらがMCを務めており、MCのクセの強さによって、披露されるコントや漫才が頭に入ってこない(?)こともあるほど新鮮かつ興味深い。SNS上の「どのチャンネル回しても、同じ人が出て同じ人がMC」といった批判へのアンチテーゼにもなっていると感じる。

最後に「上田と女~」だが、これはOAから漏れたトークを発信。上田晋也の名MCに女性タレントたちの毒や面白エピソードが良いマリアージュとなっているほか、ベテランからZ世代まで出演しているため、ジェネレーションギャップが浮き彫りになった凸凹の丁々発止が笑いを誘う。

「もっとTVerという場で遊んでもらいたい」


そもそもテレビは1時間の番組に3時間以上カメラを回すことも珍しくなく、やむを得ず放送でカットされる部分も見せられるというのは労力的にもエコ。前出の担当者は「それ以外にも、テレビの課題として、才能ある人材は多くいるのに、放送枠や放送時間の数に限りがあるため、優秀な人材たちを十分に活用しきれていない部分がある。TVerがその場を提供することで、テレビの力を最大限発揮することにつながってほしい。ユーザーもテレビの作り手も、TVerという場でもっと遊んでもらいたい」と期待を語る。

今後、TVerではさらにオリジナルコンテンツを増やしていく予定。たとえば5月31日からは「悪女(わる)~働くのがカッコ悪いなんて誰が言った?~」(毎週水曜夜10:00-11:00、日本テレビ系)のオリジナルスピンオフドラマ「悪男(わる)~恋する男がカッコ悪いなんて誰が言った?~」が全3話で配信開始されている。日本テレビのGP帯ドラマが、TVerでオリジナルドラマを配信するのは初めての試みだ。

この試みにより、テレビは本当に変われるのか、そして再び人々の話題の中心になっていけるのか、見守りたい。

取材・文=衣輪晋一(メディア研究家)