――「好きな人のためなら変われるかもしれない女の子の話」を創作したきっかけや理由があればお教えください。
もともと作中に登場する4人の幼馴染の男の子たちのキャラクターが先に出来上がっていて、彼らの中に「姉がいる」という設定を持った男の子がいたので、その姉を登場させようと思ったことと、前回描いた彼らの漫画で1人だけ登場回数が少ない男の子がいたので、せっかくなら2人を絡めたお話を考えようと思ったことがきっかけになりました。深い意味などは特になく、成り行きです。
――“告白が成功してハッピーエンド”ではないところにオリジナリティを感じたのですが、敢えて恋を実らせなかった理由は?
作中で本人も言ってる通り、泉が詩織を好きになる要素がないからです(笑)。好きになる魅力を持っていないのに告白が成功してしまったら、「今のまま変わらなくてもいい」ということになってしまうので(付き合ってから変わるということもあると思いますが)、今の詩織を否定するために、かつて詩織を救った泉に振ってもらう必要がありました。詩織自身が、「今の自分から変わりたい」「現状から抜け出したい」と本当は望んでいたからこそ、良い結果になった失恋だったと思います。
――詩織はいわゆる“HSP”という解釈になるのでしょうか。
おっしゃる通り、詩織はHSPのイメージで描いています。生まれながらに繊細で、物事に対してものすごく敏感な気質を持つ女の子として考えています。恥ずかしながら少し自分をモデルにしているところがあって、私も彼女のように気持ちが動くとすぐに泣いたり考え込みすぎたりするタイプなんです。詩織のキャラクターやストーリーをどう作ろうかと考えていく中で、自分の生きづらさのようなものを詩織に伝えてもらったら面白いかなと思って、このような性格になりました。あと、弟の千早がすごくモテる設定なので、“弟がモテるなら姉も美人でモテるだろう”という発想の逆をいきたかったというのもあります。
――今作の中で特に気に入っているシーンやセリフがあれば、理由と共にお教えください。
詩織の「誰にも渡したくない」というセリフはストーリーの盛り上がりどころとして使いたいと最初に思っていたので、気に入っています! このシーンを中心に、前後のストーリーを埋めていきました。あとは、千早が「ええな~大学生は気楽で」と母親に言われて「ええやろ」と返すシーンです。母親のチクリとした言葉に対して、すぐにこういうラフな返答ができて、なおかつそれが許されるというのは末っ子ならではっぽいですし、姉弟間の差も表現できたのではないかと思っています。
――「続きを読みたい」という声が多くありましたが、今後詩織と泉の仲が進展し、それが描かれる可能性はありますか?
続きを期待してくださる方がいらっしゃって本当に嬉しいのですが、毎回短話完結のエピソードとして終わらせるつもりで描いたので、今後特に2人の進展を描く予定はありません。ただ、何かしらの形で他のエピソードに詩織が登場することはあると思うので、そのときは泉との掛け合いが描けたらなと思っています。これは最初に幼馴染組を作った時から決めていることなのですが、彼ら4人に特定の恋人を作るつもりがそもそもないので、今後もただ彼らの友情が描いていけたらな、と思っています。
――ラストには詩織がスーツを着て、就職活動をしている様子が描かれています。幼馴染組の友情だけではなく、彼女の成長物語も今後は見ることができるのでしょうか。
お話が浮かべば描いてみたいかもしれません……! 詩織は引きこもりだったので、自分を守ってくれているような、気持ちが落ち着く、安心できる部屋という空間に愛着や思い入れをきっと持っていたのではないかと思うんです。そして、彼女の元来の敏感さや、人の気持ちを汲み取ることができる気質で、その人に合った空間を作ることに向いているんじゃないかと思い、インテリアコーディネーターになるんじゃないかなと想像しています。いつかぜひ、詩織の物語のためにも、本職の方からお話を伺ってみたいです!
――千景さんの今後の展望や目標をお教えください。
具体的には特に何もなくて……(笑)。何か目標などを作ってしまうと、そこにたどり着けない自分に絶望しちゃったり焦ったりしちゃうので、とにかく自分のペースで、これからも好きな絵や好きなフェチを好きなように描いていく姿勢で創作を続けていきたいです! その上で、どなたかと何か楽しいお仕事に繋がればとても嬉しいです!
――作品を楽しみにしている読者へメッセージをお願いします。
楽しみにしていただけているのかどうか全然自信がないのですが……とにかく絵を描いたりお話を考えたりすることが私自身楽しくてやめられないので、これからも表現の技術や画力を伸ばしていけたらと思っています。作品もですが、絵の素人が成長するために頑張ってるなという過程も、ひとつのコンテンツとして一緒に楽しんでくださればと思っています。なおかつ、応援していただけたらとっても嬉しいです!
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