テレビ朝日が誇る「木曜ミステリー」が今夏、23年の歴史に終幕。そのフィナーレを飾るのが上川隆也主演ドラマ『遺留捜査』の第7シリーズだ。同作は上川にとっても最も長く演じたシリーズでもあり、「まるで春夏秋冬問わず、袖を通したくなる、通せば心地よい、そんな感じの現場」と作品への愛着も深い。上川はどのような思いで最新作を演じるのか。また、声優としても活躍し、アニメ・ゲームに造詣の深い彼は、コロナ禍の自粛期間にも様々な作品に触れて過ごしていたという。「エンターテイメントは“心の遊び場”」と語る上川に、アニメやゲームの魅力を聞いた。
事件現場に残された“遺留品”が持つ意味を徹底的に探り、声なき遺体が訴えたかったメッセージを代弁。事件そのものを解決するだけでなく、遺族の心情をも救う優しさと、超マイペースで空気を読まない不思議キャラで、視聴者を虜にしてきた刑事・ 糸村聡(上川隆也)の活躍を描く『遺留捜査』。第1シーズンからのレギュラーである科学捜査研究所係官・村木繁(甲本雅裕)も健在。糸村×村木の絶妙なやり取りも見どころだ。
――10年以上、糸村刑事という役柄を演じてこられましたが、糸村という役柄の面白さをどうお考えですか?
独自のアイデンティティと言いますか、彼自身が持ち携えているどこか不思議な雰囲気や、掴みどころのない挙動などは唯一無二だと思っています。また僕のキャリアで最も長く演じている役でもありますので、その愛着をふくめて、他にはない愛おしさがあります。神経質な無神経さというのでしょうか。遺留品から得られる情報には全集中しますし、一方で登場人物への言動にはどこか無神経をいとわない部分があり、その相反する要素が糸村の中には明確に同居している。それが糸村を糸村たらしめているようにも思っています。
――そんな役柄で「木曜ミステリー」のラストを飾ります。
そうした大きな誉を担うには『遺留捜査』という作品はちょっと埒外にいると思うんです(笑)。刑事ドラマとしてもミステリー作品としても、ある意味スタンダードを逸脱した作品ですから。つい先日も台本の最後のオチとも言えるシーンのセリフが変更され、あとはアドリブという時間になってしまった。台本が無いまま1分近くカメラを回しっぱなしだったんですが、全員が心得たもので誰一人芝居が止まることなく、むしろ監督もどこでカットをかけていいのか悩んでいらっしゃるかのような(笑)。そういった作品で幕を閉じることを誇らしく思いながらも、一方で申し訳なくすら思うというか……。ですが最後を飾るために今できる限りを注ぎ込み、お歴々の作品や歴史に恥じない作品にしたいと思っています。
――どうしてこれほど愛される作品になったと思われますか?
犯人捜査、逮捕。その先にある、事件にまつわる方々の心情や、被害に遭われた方の想いに、遺留品を通して更に一歩踏み込んでいく作品は他に類を見ないというところに、その理由の一端を見つけていただけるのではないかと思います。演者が言うのも変ですが。
――第4シーズンから舞台が京都へ変わり、その景色の美しさも魅力となりました。
僕たちも京都の四季を楽しませていただいていると同時に、その心和むような環境を『遺留捜査』を通して楽しんでいただけたらと願っています。ちなみに僕は東京都の八王子市出身なのですが、京都とは盆地という点が共通しているんです。そこでめぐりまわる季節感というものも、京都と八王子でどこか似通ったものがあるように思えてり、それゆえ、京都には勝手ながら愛着を抱いています。
――上川さんにとって、俳優として最も大事にしていることは何ですか?
煎じ詰めると「楽しむ」ということになるのではないでしょうか。役どころも環境も、ご一緒させていただく共演者の皆様もふくめて、その時その時に巡り会うそれぞれの事象を楽しんでいきたいと思っていますし、それが演技にもおそらく、色濃く影を落とすのだと考えます。
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