7月13日(水)から、ディズニー公式動画配信サービス「ディズニープラス」の新コンテンツブランド「スター」にて、英国の伝説的パンクロックバンド“セックス・ピストルズ”を描くオリジナルドラマシリーズ「セックス・ピストルズ」が独占配信される。今回、音楽ジャーナリストの原田和典氏が、“私的体験”も含め、独自の視点で彼らの魅力を紹介する。
ドラマ「セックス・ピストルズ」の監督を務めるのは、「トレインスポッティング」「スラムドッグ$ミリオネア」など、数々の名作を生み出してきたダニー・ボイル。脚本は、「ムーランルージュ」「華麗なるギャツビー」を手掛けたクレイグ・ピアースが務める。長きにわたって活動する才人2人が、ピストルズの創始者の1人(※)であるギター奏者、スティーヴ・ジョーンズが書いた自伝「Lonely Boy: Tales from a Sex Pistol」を基に描く。
アメリカツアーの失敗、バンド内の不和、突如の脱退などによって終わりを迎えた伝説のバンドについて、オリジナルメンバーであるスティーヴから見た、新しい視点でのセックス・ピストルズが語られる。
筆者としては、このドラマで新たなピストルズ・ファンがどんどん増えていくと思うと、それだけでわくわくしてしまう。スケールが大きな娯楽作品がそろう動画配信サービスと、パンク・ロックの象徴的なバンドが結びつくとは、誰が予想できただろう。これだから世の中は面白い。
セックス・ピストルズの魅力とは何か。筆者は「超キャッチーであること」に尽きると思う。グループ名、音楽、外見、一度接したら忘れることのできないインパクトを放ち、同時に親しみやすい。
自分も多感の頃、セックス・ピストルズというバンドがあることを知り、密林に飛び込む気持ちで彼らの音楽に入門した(グループの仕掛け人であるマルコム・マクラーレンが「SEX」というブティックを経営していて、そこにメンバーが出入りしていたという話は後で知った)。
日本のロックバンドであるセックス・マシンガンズなども、ピストルズが先に存在していたからこその命名であるはずだ。
ギターのパワー・コード(和音の構成音から「ルート」の音と「5度」の音だけを弾くギター奏法)、ベースはルート弾き、ドラムは8ビート(ドドタッ・ドドタッという感じで刻む)。これはロックの最大公約数、食事で言えば主食・おかず・汁物の三点セットみたいなものだ。ピストルズは基本的にこれで突進する。
短時間でサマになるやり方だし、かっこいいため、楽器を手にしてバンドを組んで、最初にコピーしたのがピストルズの楽曲だったというミュージシャンは星の数ほどいるのでは。
分かる人だけ分かればいい的な小手先の技など使わないから、音が太くて濃い。しかもボーカルのジョニー・ロットンは、濁りまくった声でわめくように歌う。唯一のオリジナルアルバム『勝手にしやがれ』の1曲目「ホリデイ・イン・ザ・サン」が与えるインパクトをどう表現しよう。
“ンニャ”と迫ってくるフレーズの語尾、投げつけるように“ヘシタレイヤ”と歌うところ(9曲目「サブミッション」では“メシタレイヤ”とも)、「英語って、これでいいんだな」と、学生時代の自分はずいぶん気が楽になったものだ。
この記事の関連情報はこちら(WEBサイト ザテレビジョン)