数奇な運命をたどったパンクロックバンド、セックス・ピストルズのギタリストであるスティーヴ・ジョーンズが執筆した「Lonely Boy: Tales from a Sex Pistol」を原作に、彼らの軌跡をスティーヴの視点で描いたドラマ「セックス・ピストルズ」の一挙配信がスタート。第1話から、スティーヴ役のトビー・ウォレスら才能溢れる若手俳優陣の演技に引き込まれた。(以下、ネタバレがあります)
同作は、ダニー・ボイルが監督、クレイグ・ピアースが脚本を務めるオリジナルドラマシリーズ。ディズニー公式動画配信サービス・ディズニープラスのコンテンツブランド「スター」にて7月13日より独占配信中だ。
ピストルズメンバーを演じるのはイギリスの若手俳優たち。ベネチア映画祭最優秀新人賞に輝いたトビー・ウォレスがギターのスティーヴ・ジョーンズを、今作で俳優デビューとなるジェイコブ・スレイターがドラムのポール・“クッキー”・クックを演じる。
さらに、アンソン・ブーンがボーカルのジョン・ライドン(ジョニー・ロットン)を、クリスチャン・リースがベースのグレン・マットロック、ルイス・パートリッジが二代目のベースとなるシド・ビシャス役を務める。
ピストルズといえば、ボーカリストのジョニー・ロットンがブッ飛んでおり、二代目ベーシストのシド・ヴィシャスがさらにその上をいく“狂気ダダ漏れ状態”だったため、相対的にどうしても“普通の人”に感じられなくもないスティーヴだが、同作の第1話から見ると、やはり彼も相当にクレイジーでワルだということがしっかり認識できる。
窃盗癖もあり、もうこれは刑務所行きしかないだろうということをしでかしたところに、ふと現れる、弁舌のやたら巧みな男。軽薄でどこかうさんくさいところがあるけれど、何か人を引きつけてやまない魅力はある。この男、“ピストルズの生みの親”ことマルコム・マクラーレンのおかげでスティーヴは更生し、ギターを大急ぎで覚える…というのが第1話の流れだ。約45分、引っ張りに引っ張る。そして第2話ではいよいよ、スティーヴとジョニー・ロットンが運命の出会いを果たす。
「まだ海のものでも山のものでもなかった頃のスティーヴを題材に1話丸ごととは、いくらなんでも大胆すぎるのではないか?」、そうお思いの方もいらっしゃることだろう。僕もそうだ。だがその分、描写がすごく丁寧で、ピストルズ登場前のブリティッシュロックのビッグヒットもふんだんに挿入される。
デヴィッド・ボウイやT・レックスの名曲が耳に飛び込んでくると、「あ、そうだ、UKパンクの勃興前はグラム・ロックの黄金時代だったんだな」との思いを新たにしてしまう。そしてスティーヴは突然変異でパンクを始めたのではなく、そうしたロックをずっと愛してきた男であったことを、このドラマはしっかり描く。
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