ダニー・ボイルが監督、クレイグ・ピアースが脚本を務めるオリジナルドラマシリーズ「セックス・ピストルズ」。今回、ジャズを中心に国内外の幅広い音楽に精通する音楽ジャーナリスト・原田和典氏が、独自の視点で同ドラマの魅力や、気になったキャストについて解説する。(以下、ネタバレが含まれます)
同作は、英国の伝説的パンクロックバンドであるセックス・ピストルズを、創始者の1人であるギター奏者、スティーヴ・ジョーンズの書いた自伝「Lonely Boy: Tales from a Sex Pistol」を基に描くドラマで、ディズニー公式動画配信サービス・ディズニープラスのコンテンツブランド「スター」にて7月13日より全6話配信中だ。
ピストルズメンバーを演じるのはイギリスの若手俳優たち。ベネチア映画祭最優秀新人賞に輝いたトビー・ウォレスがギターのスティーヴ・ジョーンズを、今作で俳優デビューとなるジェイコブ・スレイターがドラムのポール・“クッキー”・クックを演じる。
さらに、アンソン・ブーンがボーカルのジョン・ライドン(ジョニー・ロットン)を、クリスチャン・リースがベースのグレン・マットロック、ルイス・パートリッジが二代目のベースとなるシド・ヴィシャス役を務める。
全員のキャラを知っているわけではないが、それでも「本人が乗り移ったかのようだ!目ヂカラから声の出し方まで、よくここまで雰囲気を出したなあ!」と、快哉をあげたくなる面々がそろっているから、ワイワイキャッキャッと見ずにはいられなくなる。ピストルズの面々、仕掛け人マルコム・マクラーレン(トーマス・ブロディ=サングスター)、その伴侶ヴィヴィアン・ウェストウッド(タルラ・ライリー)、のちに“プリテンダーズ”を結成するクリッシー・ハインド(シドニー・チャンドラー)ら、登場人物の佇まいがいちいち濃い。
1970年代半ばの英国ロンドンの一角には、こんなにアクの強いメンバーがそろっていたのか、これはヘタに現場にいたら悪酔いするばかりだったのでは、とも思うばかりだ。刹那の巨大な渦の中で、バンドも関係者も観客もひたすらギラギラしている。
溢れるエネルギー、飛び散るカオス。たとえパンクロックになじみがない方でも、画面から発せられる怒涛(どとう)の勢いに飲み込まれるに違いない。Situation(シチュアイション)、Baby(バイビー)、Amazing(アマイジング)、Today(トゥダイ)など、学校では決して教えてくれない訛った発音もたっぷり聴ける。
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