「家事ヤロウ!!!」簡単レシピは本当に簡単なのか?/テレビお久しぶり#8

2022/07/22 21:30 配信

バラエティー コラム 連載

「テレビお久しぶり」(C)犬のかがやき

7年ぶりにテレビ番組を見るというライター・城戸さんが、TVerで見た番組を独特な視点で語る連載です。今回は「家事ヤロウ!!!」(毎週火曜夜7;00-7:54、テレビ朝日系)をチョイス。

「家事ヤロウ!!!」簡単レシピは本当に簡単なのか?


あなたの最も好きな家事は何だろうか。料理はもちろん、掃除が好きだという人は結構多いし、洗濯物を干すのが好きという人だって珍しくないだろう。皿を洗うのが好きだという人、エアコンのフィルターを掃除するのが好きだという人だっているはずだ。家事というものは、生きて家に住む以上、逃げられない。それならば、楽しみながらこなせたほうがいい。

ちなみに私の最も好きな家事は、放置である。家ではもっぱら放置をしている。朝起きて一番にやることといえば放置。そして昼に放置をして、夜に放置をする。どうしても腹が減って食器を洗ったりすることはあるが、そのたびに、やはり放置が性に合っていると実感する。

「そんなの家事じゃないよ」と言われるだろうが、一度放置の味を覚えてしまった者は、料理、掃除、洗濯には戻れない。スーパーで材料をそろえ、自炊をすれば、食費だって安く済むことくらい知っている。定期的に掃除をして清潔な状態を保てば、精神衛生にも非常に良いことだって知っている。布団のシーツだって1週間に1度は洗ったほうがいい。そんなこと、考えりゃわかる。わかっている。わかっているのに、コンビニで弁当を買い、ゴミは床に捨て、シーツは半年洗わずに使ってしまう。いくら説教されたって変わらない。私は善悪の区別はついている。その中で、快楽たる放置を選択しているにすぎない。

しかし、ごくたまに、放置ばかりじゃなく、料理でもしてみようか、と浮気をしてみたくなる瞬間も訪れる。インターネットには料理系のコンテンツがあふれていて、多種多様なレシピに簡単にアクセスすることができ、私の胃袋を誘惑するのだ。ほとんどは私に真似できるはずもないような、途方もない工程(みじん切りとか)をつきつけてくるものばかりなのだが、SNSなんかでよくバズっている、いわゆる「簡単コスパ飯」系の料理であれば、「これなら私にも真似ができる」と思わせてくれる。が、放置が身に染みついてしまった私にとって、まな板と包丁を取り出すことさえ億劫で仕方がなく、結局コンビニへと向かってしまうのだ。

私の億劫さにかなうような、簡単最強レシピはないものだろうか。そんなことを思いながらTVerを漁っていると、「家事ヤロウ!!!」という番組が目に入る。そうめんアレンジSP…?どうも、コンビニ食材とそうめんの美味しいアレンジを紹介してくれるという。まさに俺のための番組じゃないか!ここにはきっと、私にもできるような簡単レシピが紹介されているに違いない。今夜のメニューを探すつもりで、私は迷わず再生ボタンを押したのだった。

まず第一に、ロバート馬場によるライスバーガーが紹介される。完成品はメチャクチャ美味そうなのだが、調理過程に電動ミルとかマルチグリルとか出てきてキレそうになる。これは本題に入る前のミニコーナーであり、市販の調味料の紹介がメインなので、こちらは割愛させていただく。

まず1つ目に紹介されるのが、ツナ缶×レモン×そうめんの組み合わせ。茹でたそうめんにオイル入りのツナ缶を投入、醤油・オリーブオイル・黒コショウ、最後にレモンで味付けをするだけという、超簡単レシピ。3年前に番組で放送され、その後SNSでも反響を呼んだ鉄板メニューとのことだ。確かに美味いだろう。しかし、ザテレビジョン上でこんなことを言っていいのかどうか分からないが、レモンがあまりにも私に関係がない。レモンって買ったことがないし、このレシピをやるためだけに買うのも微妙だろう。ちょっとこれは作れない。「城戸でも作れるか」ということをぜひ意識していただきたいところである。

そして2つ目は、TikTokで話題になったという「ふわふわ卵そうめん」だ。これはすごい。そうめんに、めんつゆ、ごま油、粗塩を投入し、卵を割り入れて一緒に混ぜ、最後に刻みねぎをかけるだけ。まな板も包丁も必要なく、手軽さはトップクラスだ。粗塩というのが気になるが、まあ普通の塩でもいいだろう。しかし、個人的には、このレシピはご飯でやりたい。わざわざそうめんを茹でない。出演者たちの反応も(中丸雄一を除いて)上々とはいかなかった。ただ、手軽さは本当に悪くない。工夫次第で化ける逸材ともいえるだろう。

3つ目は、「台湾まぜそば風そうめん」。レンジでチンした豚ひき肉に、焼肉のたれと食べるラー油を入れて混ぜ、そうめんの上に載せるというもの。さらに上に卵黄を載せて、少しばかり手順を踏むが、これはマジで美味そう。しかし、家に豚ひき肉と焼肉のたれ、食べるラー油があるならば、もっと別のことをしてしまうような気もするなあ…と思っていたら、バカリズムが「これご飯で食べたいなあ」と言い出す。彼ほどの有名人でも、私と同じことを考えるんだなあと思った。

4つ目は、料理研究家リュウジによって考案された、「無限塩バター焼きそうめん」。名前は美味しそうだが、まずフライパンで目玉焼きを焼くという工程が出てきて私を驚かせる。さらにベーコン30gを細切りにし、バターを溶かしてまたしてもフライパンで焼く必要がある。そこに、そうめんと白だしとオリーブオイルを入れ、弱火で炒める。その上に粉チーズと黒コショウをまぶし、目玉焼きを載せて完成。もちろん美味いだろうが、美味くなきゃおかしいレベルの工程の多さである。簡単レシピには、フライパンもベーコンも粉チーズも登場してはならないのだ。

偉そうに文句をつけまくってしまったが、3つ目の台湾まぜそば風そうめんにはかなり興味をそそられる。豚ひき肉の調理を、フライパンでなくレンチンで済ませられるのも素晴らしい。今夜は久しぶりに自炊をしようか…。でも、そうめん自体かなり久しぶりだから、一旦めんつゆでもいいかなあ…でもそうめんって買うならスーパーだよな…じゃ、スーパーは明日行くことにするか…。じゃあ、いっか、今日はカップ麺で…。