――木村さんは菊谷さんに対してどういう印象を持っていたんですか?
木村:チンピラですよ。ワンカップとか持って、パチンコ屋とかにいる感じ。でも、おしゃべりの天才だと思います。天才って寡黙な人が多いイメージがあるんですけど、めちゃくちゃしゃべる。
菊谷D:そんなことないですよ。普段はめちゃくちゃ寡黙。今は追い込まれて、こういうことになっているけど。
木村:それが面白いですよね。当時もそうですけど、次から次へと言葉がバーっと出てくる。それで、みんなのことをすごくよく見ているんです。目がいっぱいあるのかなと思ったりもします。
――「saku saku」は木村さんのルーツとも言える番組かと思いますが、この番組から受けた影響はやはり大きいですか。
木村:かなりあると思います。そんなに器用な人間ではないので、昔は番組で一言もしゃべらなかったこともあるんですけど、それって普通だったら良しとはされないじゃないですか。
――MCなのに一言もしゃべらなかったんですか?
菊谷D:たぶん皆さん信じてないと思うんですけど、本当にあったんですよ。
木村:ただ座っているだけ。
菊谷D:伝説ですよね。
木村:後になれば「なにをやっているんだ」ともちろん思いますけど、全部受け入れてくれたことがすごく居心地いいんです。実家にいる感じというか、ずっとこたつの中にいてみかんを食べていていい、みたいな。「ありのままの私」というような表現の仕方はそこで開花したんじゃないかなと思います。
――「saku saku」の影響で、その後も自然体なスタイルが確立されていった、と。
木村:それはやっぱりあると思います。
菊谷D:台本とかは全く作らずにアドリブでやっていたので、当時カエラちゃんが何もしゃべらなかったのは、おそらくカエラちゃんなりの「しゃべることが分かんねぇ」っていう生き様だったんだと思います。アドリブというのは、一番その人の生き様が出るのでたまらないんですよね。
――ほとんどテレビに出始めたばかりで、ほとんどアドリブの番組って難しくないんですか?
菊谷D:難しいのかも分からないですけど、そういう恐れすら当時は全く意識していなかったので、いい意味で突っ走っていたんですよね。
――反響の大きさはどう感じていたんでしょうか?
菊谷D:見てくれている人がメールとかをくれて、それを見て初めて「こういうふうに思ってくれる人がいるんだ」というのは分かるんですけど、やっぱり当時はよく分かっていなかったですね。カエラちゃんがブレイクしたことで戸惑った、というのはありました。あまりにも注目されるとちょっと怖いというか、「ちゃんとしたことをやんなきゃいけないじゃないか」と、俺だけじゃなくてテレビ局としてみんな思うじゃないですか。
――木村さんも、声を掛けられることが増えていったんじゃないですか?
木村:デビューする前もした後も、いつも東横線に乗って行き帰りしていたので、よくサクサカー(「saku saku」視聴者)の人たちとお話しながら帰っていました。座席に座って、前の席の人と。
――そんなことあるんですか?
木村:それはそれで楽しかったですね。東横線に乗っていて「カエラちゃんでしょ、あなた」って話し掛けられたんですけど、話していたら「私も見ています」というふうに人が増えていくんです。毎回じゃないけど電車も長くて暇なので「いい時間だな」と思いながら話していました。