市川染五郎『三谷かぶき』出演がつないだ大河への縁 三谷幸喜作品の魅力は「どのキャラクターも愛しい」

「鎌倉殿の13人」で源義高を演じた市川染五郎撮影=曽我美芽

8月12日(金)から18日(木)の1週間限定で、シネマ歌舞伎「三谷かぶき 月光露針路日本 風雲児たち」が全国の映画館で上映される(東劇のみ9月1日[木]まで上映)。2019年に三谷幸喜が作・演出を務め上演された本作は、江戸時代、異国の地ロシアに漂流した日本人船乗りたちが、さまざまな困難に直面しながらも故郷を目指す姿を描いた冒険コメディ。WEBザテレビジョンでは、本作での三谷との出会いをきっかけに、のちに大河ドラマ「鎌倉殿の13人」へ出演することとなった市川染五郎にインタビューを実施。「鎌倉殿」では木曽義仲の息子・義高を演じ、凛とした美しさと悲劇的な最期で話題を集めた彼は、三谷作品の魅力を「キャラクターひとりひとりの個性が際立っていて、どの人も愛しいところ」と語った。

三谷の演出は「接続詞が大事」


――普段の稽古と、シネマ歌舞伎「三谷かぶき 月光露針路日本 風雲児たち」の稽古に違いはありましたか?

期間が1か月くらいありました。現代的な言葉のお芝居が初めてだったので、脚本と演出を担当された三谷さんや、共演の八嶋智人さんにお芝居の基本的なところから教えてもらいました。衣装が洋装っていうのも初めてで不思議な感じがありましたね。稽古のときは、普段は浴衣でやることが多いんですけど、今回は基本ジャージで参加していました。新作の歌舞伎のときは、みなさんTシャツにジャージでお稽古される方も多いですね。

――実際に舞台を見させていただいて、笑いのシーンが印象に残りました。

笑いのシーンを特別に稽古するということはなかったんですが、先輩方の作るテンポや空気感が自然とできあがっていって、自分もそこに自然に乗せてもらった感じでした。

――三谷さんの演出をそのときに初めて受けられていかがでしたか?

三谷さんの演出を受けて、一番「なるほどな」と思ったのは、「接続詞が大事」とおっしゃっていたことです。もちろんセリフで伝えたい内容を伝えることが重要ですが、その前後の接続詞をどう強調すれば、本当に伝えたい内容がお客様に伝わるかということを教えていただきました。今もそこは意識しています。

市川染五郎撮影=曽我美芽


義高は「父の義仲だったらどうするか」をいつも考えている


――この作品が、大河ドラマ「鎌倉殿の13人」につながったそうですが、「鎌倉殿」の出演に際して、三谷さんに何か言われたことはありましたか?

シネマ歌舞伎を上映するのは今回が2回目なんですけど、初公開(2020年10月)のときに、映画館で舞台挨拶があったんです。父が登壇したので見に行っていて、その控室で三谷さんに久しぶりにお会いして、大河ドラマに是非出てくださいと言っていただきました。

――そのときは、源義高 (冠者殿)を演じるということはわかってたんですか?

そのときはまだ知りませんでした。その後、正式にオファーをいただいてから源義高という人についていろいろ調べ始めて。本当は11、12歳の役なので、子供っぽく演じたらいいのか、年齢は意識せずに演じたらいいのかなど、いろいろ考えながら作っていきました。

――さきほど「三谷かぶき」のときにいろいろアドバイスをくれたという八嶋さんとも、同じ時期に「鎌倉殿」に出演されていましたよね。

はい。同じシーンもありました。八嶋さんは「三谷かぶき」で共演して以来とても気にかけてくださって、今年の6月に勤めた「信康」という歌舞伎を見に来てくださったりして。ただ、なかなかお話をちゃんとする機会はなかったので、大河で同じシーンがあったのはすごくうれしかったですね。八嶋さんは舞台のときすごく細かいところまで見てアドバイスしてくださるので、とても心強かったです。

――「鎌倉殿」で演じられた源義高に関しては、どのようなことを考えながら演じていましたか?

父親である木曽義仲を心から尊敬しているということは意識して演じていました。実際に脚本に描かれない場面でも、義高は何かを決断するときに「父の義仲だったらどうするか」を毎回考えて行動しているのではないかと意識しながら演じました。

市川染五郎撮影=曽我美芽