漫画家・カレー沢薫氏が、自身の抱える発達障害について描くコミックエッセイ「なおりはしないが、ましになる」(以下「なおまし」)2巻が7月29日(金)に出版された。1つのことしかできない、相手の顔を覚えられない、空気が読めない、部屋が片付けられないなど、長年様々な“困りごと”を抱えてきたカレー沢氏。1巻ではそんな彼女がメンタルクリニックで発達障害の診断を受け、発達障害の特性について知っていく様子が描かれた。2巻では引き続き日常生活における苦悩を描きつつ、発達障害とよりうまく付き合っていく具体的な方法についても触れられている。タイトルも印象的な本作、どんな思いで描かれたのか、そして発達障害と向き合う中で変化した点はあるのか。カレー沢氏と、間近で見守る担当編集・諸葛亮氏(仮名)に聞いた。
発達障害とは、先天的な脳機能障害と言われている。作中でも明記されている通り、まだ発達障害になる原因ははっきりしていないが、精神的な病ではなく脳に理由があることは明らかだ。大きく分けると落ち着きがなく、なくしものなどが多いADHD(注意欠如・多動性障害)、コミュニケーションや空気を読むのが苦手なASD(自閉症スペクトラム障害)、読み書きや計算など学習の一部が極端に苦手なLD(学習障害)の3種類がある。
元々会社員として働きながら、兼業漫画家として活動していたカレー沢氏。会社を退職したことをきっかけに、かねてから懸念していた発達障害の可能性と向き合うこととなった。
「初めから『発達障害について描こう』というよりも、どちらかというと「次の連載何する?」という話から始まった形です。ちょうど会社をやめて動ける時間が増えていたので、自身が長年抱えている問題に向き合う良い機会だと思い、ついでに漫画のネタになれば良いなと思いました」(カレー沢氏)
「前作(『ニコニコはんしょくアクマ』『猫工船』)が終わった後、次はどんな連載にしようかと打ち合わせをしている中で、私の周りに発達障害の方がいて、その話をしたところ、カレー沢さんが『私も実はそうかもしれない』という話をしてくださいました。前々から、カレー沢さんはエッセイ力が大変高く、次作はエッセイを描いてみてほしいと思っていたので、せっかくならとことんこのことに向き合い、連載にしてみませんか、というお話をして、一緒に通院が始まりました」(諸葛亮氏)
こうしてクリニックを訪れ、検査の結果、発達障害の中で軽度のADHDとASDに当てはまると診断を受けたカレー沢氏。当時を振り返り「ショックが全くなかったわけではありませんが、安心の方が大きかった気がします。人間性の問題だと言われる方がキツイので」と語った。
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