映像配信サービスdTVでは、夏休みシーズンに向けてK-POPコンテンツのラインナップを強化し、8月1日にはK-POPの音楽ライブ作品が合計100タイトルを突破。そんなK-POPについて、世界中の人々を魅了するK-POPアーティストたちと交流を深めてきた評論家・古家正亨氏のインタビューを紹介する。時代を動かしてきたK-POP界の戦略性やその魅力について深掘りしていく。
僕がK-POPにハマったきっかけは、その曲からほとばしるパッションでした。もちろん、日本を含め他の国の音楽に情熱がないとは言いませんが、初めてK-POPを聴いた時の胸騒ぎは、何とも言えないものでした。
初めて聴いたのは90年代。とあるバラード曲だったのですが、言葉がわからない状態で聴いても、そのメロディーと歌い方から感じられる独特な悲哀が、とにかく僕の感情を刺激したんです。それから一気に韓国音楽に対しての興味関心が湧き、韓国へ留学。そして今では、その魅力を伝える側になっています。
今は、K-POPアイドルを介して、韓国の音楽と出会っている方が多いのではないでしょうか。K-POPにハマる人にその理由やきっかけについて尋ねたことがあったのですが、その答えは一様に「歌が上手い」「ダンス・パフォーマンスのクオリティが高い」「格好いい」「きれい」といった、意外にも抽象的なものが多かったんです。
今挙がったような理由も魅力の1つであることは間違いありませんが、僕が学生の頃にFMラジオから音楽に夢中になった時代と違い、洋楽の勢いが衰えてしまったこともK-POPの普及の背景にあるような気がします。
同時に、メディアが多様化し、余暇の過ごし方も大きく変わりつつある中でK-POP界が進めた、映像を絡めたメディア展開が時代を大きく捕らえました。動画投稿サイトで“観て楽しむ音楽”という、新しい音楽の聴き方を世界中どこよりも早く聴取者に提案できたことが、多くの人々を魅了するきっかけになっていると思います。それはまるで、第2のMTV時代到来をも感じさせるものでした。
その“観て楽しむ”という部分が、若いスマホ世代や時代性にピッタリマッチしてさらに広まっていったのだと思います。日本では今も一部のレコード会社でアーティストのMV(ミュージックビデオ)のフルヴァージョンを動画投稿サイトで解禁していないケースがあるほど、著作権をはじめとするアーティストなどの権利保護に力を置いていますが、韓国ではまずそれはありません。むしろCD販売や音源配信よりも先にMVを解禁することも少なくありません。
国によって音楽のビジネスモデルに違いはありますが、韓国ではあくまで音源はプロモーション・ツールの1つであり、音源をベースに、その先のアーティストプロモーションやライブなどのビジネスを見据えている。日本のようにCDや音源そのもので何かを回収しようという考えがそもそもないのです。そういった韓国的な音楽の楽しみ方が、何でもスマホで完結してしまう若い世代の皆さんに適合していたのだと思います。
また、良し悪しはありますが、K-POPスター達のプライベート動画などを、SNSを介して定期的に配信・更新してくれることもあり、とにかく観たいと思わせるコンテンツが豊富。しかも、ほとんどが無料です。こういったファン・サービスが、K-POPスターをより身近に感じさせてくれることも若い世代の心に刺さったのではないでしょうか。あとは韓国ドラマ同様、コロナ禍で外出できなかった時間が長く、その間にハマってしまったという方も多いですよね。
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